「今日は行くな」

773 :1/2:2007/01/16(火) 20:11:18 ID:TSKnpAIM0
婆ちゃんの爺ちゃんの話 

婆ちゃんの家は、元は大庄屋だったそうで 
婆ちゃんの爺ちゃんは結構なお殿様だったらしい 
奥さんが居るのに愛人を作って 
止める奥さんを柱に縛り付け 
馬にまたがり、颯爽と愛人の元へ消えて行く、 
そんな人だったとか 

そんな婆ちゃんの爺ちゃんがまだ結婚する前の話 
ある日、山を越えた村の娘さんに恋をした 
馬にまたがり山を掛けて行く婆ちゃんの爺ちゃん、 
その日は出発前に母親が「今日は行くな」と何度も引き止めたが 
恋に燃える爺ちゃんは聞く耳持たず 

と、峠の近くで葬式の列を見かけた 
暫く行列を眺める爺ちゃん 

行列はかなり長く、誰が死んだのか気になった爺ちゃんは 
馬を下りて訊ねてみようと思ったそうだ 

が、そのとき爺ちゃん愛用の褌がブチと音を立てた 
爺ちゃんの褌は、母親が手縫いで作った絹の褌 
滅多な事では切れない、今まで破れはしても切れた事など無い 
爺ちゃんは「こんな褌で女の所に行けん!」と 
元来た道を急いで帰った 

山の麓まで来た時、うろうろしている母親を発見した爺ちゃん 
「なにしよるね」「○○さん(爺ちゃん)を待っとったそ」 
「なして」「心配しとったそよ」 
そんな事を話しながら、爺ちゃんは褌が気になって仕方ない 

「褌が切れたから帰って来たぃね。途中で葬式を見た。 
 かなりの行列やったが、あれは誰かね」 

そう言うと、母親の顔色がさっと変わり 
「誰にも言わんでええぃね。はよ帰ろういね」と言われてしまった。 

爺ちゃんは女の所へ行きたくて仕方なかったが 
母親の反応が気味悪く、その日は大人しく家に籠る事にした。 

ちなみに爺ちゃんの村でも山の向こうの村でも 
その日に葬式を行った家は無かったそうだ。 
結局その葬式がなんだったのかは、婆ちゃんの爺ちゃんも 
その母親もとっくに死んでるので分からない。 

これまた怖くないけど、何故か覚えている話。

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