ブロック

56 ME ◆KCYjPGrG56 sage 2011/04/05(火) 14:16:16.73 ID:s/wNHMjH0
子どもって自分では気づいていないけれど、相当変な事をしでかす(自分もそうだった)生き物だ。 
自分の周囲には、ずば抜けて変わり者だった男の子「いっ君」がいた。 
幼稚園の遊び時間。 
珍しく「外で遊ぶ」とはしゃぐいっ君と一緒に砂場で遊んでいた。 
砂のお城や泥団子を作っておままごとをするわけではない。 
いっ君は朝から無性に砂場に埋まっている物が気になっていたらしい。 
「MEちゃんも、手伝って」といっ君に言われて、黙々と砂場を掘り返していた。

しばらくすると、いっ君は何かを見つけた。 
赤いペンキで塗られたピカピカの多面体ブロック一個が出てきた。 
とても物静かで大人しいいっ君が最初に見つけたのに、 
砂場の脇で見ていた意地悪たっ君に突き飛ばされてブロックを奪われてしまった。 
たっ君は「宇宙からのいん石だー!」とはしゃいでいると、突然赤いブロックを握り締めたまま泡を吹いて倒れた。 
それを見ていっ君はにっこり笑って園外に停車していた車に向かって手を振った。 
「いっ君、どうしたの?」 
「宇宙人にね、ありがとうって手を振ったんだよ」 
車からオジサンが出てきていっ君に手を振りかえした。 
それから、オジサンは地面を指した。 
いっ君は倒れているたっ君からブロックを奪い返し、砂場に埋めなおした。 
いつの間にか、オジサンと車は消えていた。 

たっ君は救急車で運ばれたはずなのに、どこの病院にかかったか誰も知らない。 
幼稚園の近所のたっ君の家の豪邸は土地ごと売りに出されていた。 
幼稚園に、鍵盤ハーモニカや体育棒、お道具箱、お弁当箱などを残して消えてしまった。 
卒園アルバムも、わざとたっ君の写っていた集合写真は使われていなかった。 
赤いブロックは宇宙人の物だったのか。 
それとも、いっ君がたっ君をこらしめるための一芝居だったのか。 

前の話へ

次の話へ