UFO

924 名前: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 04/02/19 03:00 
アメリカの学生の話。 

彼には変わった友人がいるのだそうだ。 
幼馴染みなのだが、小さい頃からUFOに夢中なのだという。 
聞くところによると、UFOを信じる怪しげな団体にも入っていたのだとか。 

友人はその団体の情報により、彼らの住んでいる町近くの山で、UFOがよく目撃 
されていたと知ったらしい。 
早速、友人はUFOとコンタクトを取るために出かけた。 
行動力は人一倍の友人に引き摺られる形で、彼も同行させられたのだという。 

彼の親戚で樵をしている伯父さんがいたので、まずは現地調査から入ることにした。 
UFOについて簡単な説明を受けた伯父さんは、事もなげに言い放った。 

 昔はいくらでもいたぞ、そんな物。 

小躍りしそうな友人と違い、彼はその言葉が引っかかった。 
いくらでも“いた”だって? 

 ああ、空飛んでいたけど、あいつら間違いなく動物だったよ。 
 耳障りな甲高い声で鳴いていたな。 
 猟師が撃った鳥とか、時たま横取りしていたっけ。 

友人と二人して、思わずポカンと口を開けてしまったそうだ。 

伯父さんは構わず続けた。 

 成長して大きくなるにつれ、段々と飛べなくなるみたいだったよ。 
 やっぱり重くなると浮かなくなるんだろう。 
 地面に落ちたやつはじたばたしていたけど、山犬や何かが咥えてどこかへ持って 
 行ってしまった。多分、食べられたんだろうよ。 
 さすがに人間が食ったって話は聞かないが。えらく生臭かったんでな。 

見てみたいと彼が訴えると、伯父さんは遠い目をしてこう語った。 

 そう言えば近頃はまったく見なくなったな・・・。 
 ・・・山の中をハイウェイが通ってから、どんどん少なくなった風に思う。 
 思うに連中、排ガスが苦手なんじゃないか? 

彼はこのことを思い出すたび、伯父さんに担がれたのではないかという思いが 
頭の中をよぎって仕方がないのだという。 
友人はショックを受けたのか、しばらくしてUFO信奉団体を脱退してしまった。 
その点では有意義な出来事だったけどな、と彼は言っている。 

しかし、友人はいまだにUFOに取り憑かれている。 
あの団体が信じられなくなっただけで、UFOを信じなくなった訳じゃない。 
友人はそう言って、今日も未知との遭遇を求めているのだそうだ。 

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