ポラロイド

898: ポラロイド1:2011/07/15(金) 00:12:08.30 ID:y7GQu/2N0
十年くらい前、地方に住んでる友人が連休を利用して東京に遊びに来た。
俺の部屋に宿泊して、AV女優のストリップに通い詰めた。

一年前からファンになり、レンタルビデオ店のイベントにも何度か足を運んでいたそうだ。
俺からみるとごく普通というか、アイドルみたいな派手さもなく、エッチも平凡のような感じだった。

しかし友人にとってそのAV女優は女神みたいなもので、いつも「もしエッチできるなら死んでもいい」と話していた。

最後に友人と会った時、ストリップのステージを見てからそのまま帰るとのことだった。
俺が友人の顔を見たのはその日が最後だった。

友人は姿を消してしまった。
それを知らされたのは、地元の警察から連絡だった。
事件か事故に巻き込まれたのは確かだったが、あの劇場を出てからの足取りがさっぱりつかめないらしく、
乗車するはずだった新幹線にも姿はなかったそうだ。

友人の家族に請われて警察の事情聴取を受けたが、心当たりはと訊かれ、あるAV女優の熱心なファンでしたと答えたが
「そのAV女優とエッチできたら死んでもいい」が口癖だったとは言えなかった。

失踪事件から半年くらいたって、そのAV女優のストリップを見に行った。
もしかしたら、友人がいるような気がしたからだった。

しかし劇場の客席に友人の姿はなく、ショウが終わるとポラロイドカメラのイベントが始まった。
お金を出せば踊り子の生写真を撮らせてもらえるらしく、俺はそのAV女優が友人のことを知ってるかどうか訊いてみようと参加した。

俺がカメラを手にして友人の名前を告げると、彼女は笑って首を降り、M字開脚の指を開いて見せた。
ステージには熱心なファンもちらほらいて、花束とかプレゼントを渡す姿もあり、彼らなら知っているかもと話しかけたが、完全に無視された。

人一人消えてなくなろうと、誰も気にしないし、所詮他人ごとなのかと思いつつ、部屋に帰りビールを飲んだ。
しばらくして、ふと、ポラロイド写真のことが気になり、ズボンのポケットから取り出すと、それは真っ黒の印画紙に変っていた。

劇場でちらっと確認したときは、確かにAV女優が写っていたと思ったが、部屋で見ると黒一色で何も写っていなかった。

俺はその時なぜかもう友人はこの世にいないと確信した。 

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