海の神様の子供

588: 本当にあった怖い名無し 2013/11/09(土) 17:24:02.94 ID:5KLddvFC0

海の話です。
昔、漁村では、漁村の出身者同士が結婚するのが一般的でした。生活習慣や価値観が 
山村とは異なるためです。村のAさんは、内陸の村に造船の交渉のため赴いた際、村の 
娘さんと良い仲になり、お嫁さんとして迎えることになりました。Aさんは男前で偉丈夫 
だったので、ねらっている娘たちも地元の村にも少なからずいて、残念がられました。

結婚して、こどもが生まれました。長男、長女と生まれて、次男が誕生。みな、元気に 
育ちました。昔は乳児死亡率が高かったので、めでたいことでした。次女が生まれたとき 
村に衝撃が走りました。その赤ん坊は、今までの子供たちと違って、いわゆる白子だった 
のです。成長するとさらに驚くことに。その子は、両親にまったく似ていない。相貌が 
白人(毛唐)のそれだったのです。両親とも純日本人の顔つきであり、母親は、背も低い。
「白人と不義密通したのではないか?」という噂もたちましたが、そのようなチャンスは 
そんな辺鄙な漁村にはなく、また、母親も貞淑な人だったので、すぐに噂は消えました。 
皆、不思議がりました。次女は、そんな皆の心配をよそに元気にそだち、6歳くらい 
に成長するとまったく白人の少女となりました。もちろん、日本語をしゃべるのですが、 
髪の毛の色は、紅葉したイチョウの葉っぱのよう、瞳の色は、サメの目のように青かったと。 
肌の色は、陽光に日焼けして真っ赤でしたが、地肌は、貝殻のように白かったそうです。 
「けとう、けとう」とまわりの子供たちからいじめられたそうですが、彼女は、父親に似て
背が高くがっちりとした体つきで、自分をいじめる子供たち(漁村の男の子です)を 
ぼこぼこにしていたそうです。 

尋常小学校(4年)を卒業したあと、成績が抜群によかったので、高等科に進むのが良い 
のではないか?と近くの村の教師に勧められました(その村には学校はありませんでした)。 
女の子に教育をしても・・という考えも両親にはあったようですが、すでに、長男が働い 
ていたので、高等科にいれることにしました。入学をひかえた春に、村を大嵐が遅いました。 
陸揚げしていた漁船が流されるほど波が高かった夜が明けると、彼女は、家からいなくなって 
いました。村人がさがしまわりましたが、村にも山にも、近くの村にもおらず、彼女は 
まったくの行方不明になってしまいました。神かくし:というやつです。

彼女は、その顔貌から海の神様の子供で、神様が嵐の夜に迎えに来たのじゃろう:という 
まるで人魚姫のような噂(かぐや姫のようでもある)がされたそうですが、もちろん、それを 
信じるものはいませんでした。ただ、彼女の勉強机(座机)の引き出しには、鉛筆で書かれた 
外国語と思われる文章が書かれたわら半紙が入っていたそうです。学校の教師を含めて誰にも 
読めず、その海岸付近に東京府から実習にきた、大学生や教員に見せても、「ドイツ語でも、 
英語でも、フランス語でもない」ということでわからなかったそうです。 

前の話へ

次の話へ