208: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/10/29(土) 21:14:56 ID:wl5xELYR0
友人の話。
彼女の実家は山村で米作りを営んでいる。 
稲刈りも終わった頃、畦横の水路を掃除していた時のことだ。 
作業している彼女の背後では、山と積まれた籾殻が燃やされていた。 
燃やすといっても炎を上げて燃やすのではなく、線香のようにゆっくりと 
数日間かけて灰にするのだそうだ。

スコップと土嚢袋を手に掃除をしていると、場違いな声が背後から聞こえた。

 あぁ~~ぁ ふぃ~~ぃ

まるで中年男性が、風呂に肩までつかった時のような、気持ち良さ気な声。 
ぎょっとして振り返ってみたが、薄い煙を上げる籾の他は何も見当たらない。 
気にしないことにして作業に戻ったが、その後も同じ声を何回か耳にした。

何かが暖を取っていたのかな? そんなことを考えた。 
以来、毎年籾殼に火を着けるたびに、その声を思い出すという。

前の話へ

次の話へ