石地蔵

546: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/01/29(日) 19:22:15 ID:rqz7leFP0

友人の話。
飼い犬の散歩は、家族中で彼の仕事なのだという。 
その夕暮れも、いつものように犬を連れ裏山を歩いていた。 
と、急に引き綱がずっしりと重くなった。引っ張ってもびくともしない。 
何を踏ん張ってやがるんだ? 振り返った途端、目が点になる。

引き綱の先に犬はいない。 
代わりに彼が引き摺っていたのは、小さな石地蔵だった。 
犬の首輪がしっかりと引っかかっている。 
薄暗くなった山道、愛犬の姿はどこにも見当たらない。

首を傾げながら家に戻ると、門の所で犬が彼を待っていた。 
嬉しそうに尻尾を振っている。 
何があった?と尋ねてみても、返事が得られる訳もない。 
とりあえず頭を一回撫でて、その日の散歩は打ち切った。

家族に話してみると、これも何かの縁だろうということになり、裏山への 
登り口にその地蔵を祀ることにしたという。 
誰が参っているのかわからないが、時折はお供え物がされてあるそうだ。

前の話へ

次の話へ