石か?糸か?

375: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/03/24(金) 20:45:35 ID:nWY0FfTG0

知り合いの話。
一人で山を縦走していた時のこと。 
夜、誰かに話し掛けられて目が覚めた。 
ツェルトのすぐ外側に、誰かが立っていた。

それは執拗に、同じ問い掛けをボソボソと繰り返している様子だ。 
耳を澄ませているうち、何とか内容が聞き取れた。 
「石か?糸か?」 
そんなことを彼にずっと聞いている。

寝惚けながらも何か答えなくては、と思い「じゃあ、石で一つ」と返事した。 
途端、フッと気配は掻き消えた。 
変な夢を見たな、それくらいの気がして再び寝入ったという。

山から下りて二日後、突然激しい腹痛に襲われて、彼は病院に運び込まれた。 
調査の結果、胆石が胆管を塞いでいるとわかり、緊急の手術がおこなわれる。 
彼の腹内からは、鶉の卵ほどもある黒い石が取り出された。

医者から「今までに痛かったとか、何か兆候はなかったのか?」と尋ねられた。 
結石がこれ程まで成長する間に、まったく何の痛みもないなどということは、 
まず考えられないのだそうだ。
対する彼の答え。 
「腹があんなに痛かったことなど、これまで記憶にない。 
 あんな類いの痛みは初めての体験だった」 
医者は最後まで、納得が行かない顔をしていたという。

あの時、糸って答えてたら、何が出て来たんだろうな? 
そう私が聞くと、彼は首を振って「考えないようにしているから」と答えた。 
ちなみにその時の石は、今でも彼の手元に有るそうだ。

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