恐怖の夜

51: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/03/05(日) 08:27:29 ID:wE52yQFZ0

生まれて初めて一人でテントを担いで山へ行き、ほとんど人の 
通らぬ山道の脇にテントを張り、あまりに気分が良かったので、 
ちょいと昼寝と洒落込み、目が覚めたら夜7時を回り、 
すっかり暗くなっていた。 

細かい雨が降り出していて、ぽつんと山の中に一人。
それまでに知った、あらゆる「怖いもの」が総動員されて 
想像と妄想が際限もなく広がり、心を支配した。 
真っ暗で動くに動けず、逃げるに逃げられず、寝るに寝られず 
外の見えないテントの中、やたら敏感になった聴覚が、さらに 
恐怖を煽り立てた。 
無論、具体的な何事かがあった訳ではない、と、思う。

当時、15歳。 
その後しばらく、遠くに見える丹沢の山々が、何となく恐ろしい 
色に染まっているように思えて仕方なかった。 
今となっては自分を可愛いもんだと思えるが、個人的には、 
山における、第一級の恐怖の夜だった。

何度かそんなことを繰り返すうち、五感に訴えかけてくるものを 
ありのままに受け入れることが、恐怖をコントロールする自分なりの 
方法だと気付いた。

前の話へ

次の話へ