402: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/03/26(日) 09:11:11 ID:GSOs+Foq0

縦走路を歩き、いくつかのピークを越えていくと、稜線上で 
古い登山ルートと交差する場所がある。 
土砂崩れや風化により、今では誰も歩かなくなった道だ。 
遠く雲海に浮かぶ、うねりや波、島のような山々が細工物のようだ。
そんな場所で、古いルートをやってくる10人以上のパーティを 
視界の端に捉えた。 
疲れてもいる。 
道は交差していて、向こうは大人数だ。 
立ち止まり、道を譲ろうとした。 
快晴の青空を見上げて一息つくと、雲が横切ったような、薄い影が 
視界のどこかを通り過ぎ、風を頬に感じた。

意識がぼんやりしていることに、不意に気付いた。 
わずか数秒前に感じた、大人数のパーティなど、どこにもいない。

「明日は、雨だな」 
山小屋の親父は、その晩言った。 
「あそこをな、そのパーティが通るとな、降るんだ」 
「雨とか雪とか、そんなもんからな、逃げてるんだな、たぶん」 
単一のパーティで、10人以上が一度に遭難した記憶はないというが、 
悪天候に巻かれて死んだ者なら、数え切れない。

風が出始め、小屋の扉が、どんと鳴った。 
「ほら来た」 
あの一行なのか、悪天候なのか、どっちだろう。 
俺と親父は、黙ってぬるい茶をすすった。

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