花吹雪

550: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/04/03(月) 23:42:00 ID:MWAAqXGE0
桜吹雪が山を艶っぽく光らせていた。 
川に落ちた桜の花びらは、急流に運ばれ、瀬に溜まった水の上で 
静かに回りながら、ゆらゆら揺れる。 
白っぽい花びらのせいだろう。 
この時期だけしか見られない光に、山は包まれる。

でもさ 
近在の猟師が言う。 
どこにも桜なんか、無いんだよな。 
そんな馬鹿な話があるものかと思ったが、確かに桜は見ていない。

この桜吹雪はどこから来るのかと問いかけると、彼は曖昧に笑った。 
山から湧いてるみたいだろ。 
確かに、木々の間から噴き出すように花びらが舞っている。

この時期、山で迷う奴が多いんだ。 
花吹雪でね、方角を見失うらしい。

相変わらず、桜の木は見つからない。 
かわりに、蛇を見かけた。 
てらてらと光る、桜色の蛇だ。 
蛇の身体から、数知れぬ鱗がはがれ、舞い上がるのを想像した。 
見たわけではない。 
ただ、その想像した光景が頭から消えない。

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