545: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/07/25(火) 22:39:28 ID:d7Ucv/+s0
早朝、テントから手を出し、靴に手を伸ばした。 
靴のかかとを地面に叩きつけ、逆さに振り、 
中に手を入れ、何か入り込んでいないか確認。 
最後に覗き込む。 
山で靴を履く前の、習慣となった動きだ。
たいてい、何もない。 
その時もそうだった。

靴を履き、立ち上がった。 
ぷち、と何かが靴の中で弾けた。 
ぷちぷち、と感触が続いた。 
さらに何かが湧いたように感じた。

慌てて座り込み、靴を乱暴に脱いだ。 
カメムシだ。 
その臭いが、靴と足から発散した。

靴の中、大量のカメムシが、潰れて貼り付いていた。 
のそのそ這い出してくるのも居る。

じっと眺めるうち、ため息が出た。 
不可解なカメムシの出現に困惑し、その臭いに 
困惑以上の思いを抱いた。 
さっきは、確かに何もなかった。
ごめんね 
子供の甲高い笑い声が、朝の湿った光の中に響いた。 
声を追い、目を上げた。 
子供の姿など、無論ない。

臭いだけは、間違いなくそこにあった。 
うんざりして、明るい夏空を見上げた。

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