携帯

806: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/08/05(土) 22:12:28 ID:3AyaI8F30
友人の話。
ある山深い所にある、親戚の別荘に遊びに行った時のこと。 
急な用事が出来て、知り合いに連絡しないといけなくなった。 
携帯電話をウッドテラスに置きっ放しにしていたことを思い出し、取りに行く。

テラスまで来て、頭を悩ませることになった。 
確かに記憶通りの場所に携帯は置いてあったのだが、なぜかそこにはまったく 
同じ機種が二つもあったのだ。色デザインまで同一だ。 
これを使っているのは、家族中でも私だけだった筈だけど。 
それに、傷の付き具合とかが瓜二つに見えるのも不可解だった。

近い方を手に取って見る。あれ、画面が表示されていないや。 
しかし通話口からは何かしらの音声が聞こえている。 
耳元へ持っていき「もしもし? どなた?」と誰何してみた。 
返事はない。

いきなり耳朶に痛みが走った。何かに噛まれたかのような鋭い痛み。 
慌てて携帯をテラスに投げ出し、耳を押さえる。 
大した傷ではないが、少し血が出ていた。

と次の瞬間、投げ棄てられた携帯に異変が生じた。 
黒い刺だらけの細い脚が何本も生え出して、驚くほど素早く走り出したのだ。 
何をする間もなく、携帯?は森の中へサササッと消え去った。

自分の見た物が信じられず、残された方の電話を、恐る恐る手に取ってみた。 
そちらは間違いなく、使い慣れた自分自身の携帯電話だったという。

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