赤いカーデガン

98 : 名古屋/1[] 投稿日:03/05/02 19:34
中学生の頃だから、今から20年程前。 
家族旅行中、真夏の名古屋で渋滞にハマりました。 
気温は35度を超えていて、車はノロノロだからクーラーもきかない。 
家族5人汗を流しながら、ぐったりしてたな。 
私は運転席の後ろに座って、窓の外を見ていました。 
しばらく停車していた渋滞の列が動き出した時に、 
すぐ脇の中央分離帯に立っていた男と、窓越しに擦れ違いました。 

分離帯には草が繁っていて、その端に立つ男は俯いていたので、 
顔は長めの髪に隠れて見えませんでした。 
男は白いスラックスをはいて、このクソ暑いのに、 
真っ赤なカーデガンを着ていました。

厨房ながらもヘンだなと思った私は、擦れ違ってすぐに、 
車のリアウィンドウ越しに振り返ってみました。 
見えたのは後ろに連なる車の列と、無人の中央分離帯だけ。 
「今、ヘンな人立ってたよね?」 
家族に訊いても、ノーリアクション。 
暑さでぼんやりしていた他の家族はともかく、運転していた父は 
目にしているはずなのに、あんなに目立つ男を見ていないなんて、、、 

ああ、他の人には見えなかったのだなと、 
その時、妙に納得したのを覚えています。 
思えばアレは本当に赤いカーデガンだったのかなと、今でも時々考えます。 
目にしたのは一瞬だったのに、 
真っ赤な色がとても鮮明に脳裏に焼き付いているので。

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