ついて来る子供

470 名前:朝日新聞 投稿日:02/02/07 21:36
昔、喫茶店で会社の同僚から聞いた話。 
K氏(同僚)は若い頃、すすきのの飲食店に勤めていた。 
ある早番の日、同じく早番だった職場の先輩と、仕事上がりに飲み屋に寄った。 
K氏も先輩も酒好きだったので、日が変わる前に店を出て、先輩の家で本格的に飲もうとなった。 
先輩氏のアパートは、創成川という川沿いにあり、すすきのから歩いて程近い距離だったので、二人で川沿いを歩くことになった。 
アパートが近づき、繁華街から離れて辺りも静かになってきた頃、二人の後ろから足音が聞こえてきた。 
振り返ると、野球帽をかぶった少年が、二人の後ろを歩いていた。 
少年はうつむいたまま、無言で歩いていたそうだ。 
時間も時間なので、どうしたのかと思いつつ、またアパートに向けて歩き出した。 
少年も、また二人の後をついてきた。 
K氏が言うには、その時にはもう、二人とも後ろを歩いている少年が生きていないことを、直感的に理解していたそうだ。 
特に確証があったわけではないが、既に周りの空気がおかしかったと言う。 
このまま放っておいたらアパートまでついてくるのではないか、と思ったので、二人で目配せして、その場で立ち止まった。 
後ろの少年も立ち止まった。 

不自然なくらい、周囲に人通りはなく、夜道に3人だけだったとK氏は言う。 
二言三言声をかけたが、少年はただうつむいて立っているだけだった。 
「どうせ相手は人間じゃないし、遠慮することは無いと思った。酒も入っていたし」とはK氏の弁。 
K氏は、少年の野球帽を取り上げてみた。 
野球帽の下には、目玉の無い顔があった。 

「それでどうしたんですか」 
と聞くと 
「とにかく走って逃げた。びっくりしたからね」 
そうK氏は答えた。 
どのように見えたのか尋ねると 
「生きてる人間とおんなじ。触れるし、いるなってのがはっきりわかる。独特の気配はあるけど、それは口ではいえない」 
という答えが帰ってきた。 


後日。 
偶然高校時代の友人と再会し、二人で飲み屋に行って焼き鳥を齧っていたら、なぜか怪談話になった。 
「とっておきの話がある。去年俺が見た話だ」 
と言うので聞いていたら、場所も状況もK氏の話とそっくりである。 
後ろから足音が、と彼が言ったところで 
「野球帽の子供だろう?」 
と聞くと 
「ちがうよ、幼稚園の制服着た女の子だ。泣いてたんだよ」 
との答えが帰って来た。 
「人通りの無いところで、そいつの顔見たんじゃないか?顔はどうだった?」 
「血まみれ」 

K氏の話を聞いてから後、同じ場所同じ状況の話を3件聞いた。 
皆状況はほぼ同じだが、出てくるものが違っていた。 
K氏は野球帽の少年、友人は幼稚園児、もう一件は小学生くらいの女の子。 
いずれも男の二人連れが、流血した重症の子供を見ているらしい。 
近所の土を掘り返してみたら、子供の死体が何体も出てきて、犯人は二人連れの男。 
いつかそんな事になるのではないかと思いつつ、思い出すたびに地方紙をチェックしている。

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