カマタくん

1398 :ほちゃん:2011/12/15(木) 01:53:47 ID:IfW3ZI6.0
今から20年ほど前。僕が小学1年生のころの話。

小学校に入学した僕は引込み思案でなかなか友達ができませんでした。
ある日。休み時間にグランドに一人で座っていたら、
一才年上の二年生のカマタくん(下の名前は覚えていません)という男の子が話しかけて
きました。
「どうしたの?遊ぼー?」
と男の子は言ってきました。私は
「うん」
と言い、二人で竹馬やらキャッチボールやらをして遊びました。

それから私は頻繁に彼と遊ぶようになり、学校の登下校も一緒でした。
小学校で初めて出来た友達だったので、とても喜んで両親に話た記憶があります。

下校途中の時のことです。

カマタ君がいつものように、車通りの多い立橋で
「ほちゃん!したっけ、また明日ね!友達たっくさん作るんだよ!」
と言い
僕が
「わかった!いっぱいつくるよ!バイバイ~カマタくーん!」
と、言って
それぞれ帰路に着きました。

次の日 

彼はいつも私の家に迎えに来て、学校にいくのですが今日は来ませんでした。
「今日はカマタくんやすみなんだ!」
といい渋々一人で学校に行きました。
いつもは、本当の弟のように優しく相手してくれる彼が居るから学校で退屈しませんが

その日は、彼のいないとてもつまらない一日でした。そして下校。
カマタくんといつも別れる立橋につきました。
立橋の階段が終わり歩いていると、後ろから誰かが歩いている気配を感じました。
同じ小学校の人かなと思い振り返り足元に視線を置くと
水色のスニーカーに白いハイソックスを履いたカマタ君でした。
「あ!カマタ君!なんで今日学校来なかったの?寂しかったよ?」
と僕が聞いても彼はうなずくだけで返事がありません。
とりあえず立橋の終わりに差し掛かったので
カマタ君に別れを告げました。
「バイバイ!また明日ね!カマタ君!」
そう言って私は再び歩き出しました。
少しして、なぜかはわかりませんが立橋のほうを振り返ってみると
立橋の階段の上でカマタ君はまだ僕のことを見ていました。
僕はすかさず手を振り、カマタ君も手を振り返してくれました。

それから10分ほど歩いて、家に着きました。
「ただいま!」
「おかえりなさい、友和」
すると母が急に悲しそうな表情になり
「今日、カマタ君休んだでしょう?」
「うん!」
「友和。これからはカマタ君に迎えに来てもらわなくても、
ちゃんと一人で学校行けるようにするのよ?わかった?」
僕はよく状況が理解できない。ましてや小1ならむりもないが。

「なんで??明日になったらカマタ君またくるよ!!」

少しの沈黙のあと母が
「あのね、」 

「今日、カマタ君のお母さんからうちに、電話が来てね・・・
昨日の夕方にカマタ君が立橋でトラックの交通事故に巻き込まれて亡くなったの・・・。」
???
「トラックに轢かれちゃったの?」
「そうよ・・・。」
???
「え??だって今日、立橋でカマタ君に会って見送って貰ったんだよ!!」

たしかにその日、僕は彼と互いに手を振って別れたはずなんだ。

「そうなの・・・カマタ君。自分がひかれた場所で友和が同じような事故に遭わないように
守ってくれたのかもね!友和、ぼーっとしてるからカマタ君は心配して見送ってくれたんだよ!」
と、母が涙ぐみながら、大泣きしてる僕を抱きしめた。
「ちゃんと、ありがとうって言わないとね!」
「うん・・・!」

2週間後、彼の両親に呼ばれカマタ君の家にお邪魔することになった。
そこで僕は、初めてお線香をあげた。
このとき心のなかで『ありがとう!』と何回も叫んだ。
彼の両親の話で、彼は僕のことを幼いながらも心配してくれていた旨の話を
聞いた。
「ほちゃん、おとなしい静かな子だから、いじめられてるんだ!だから、俺が
ほちゃんのお兄になって守ってあげないとダメなんだ!」
と毎日張り切って俺を迎えに行っていたようだ。

それから彼の昔のアルバムを見たり、ビデオを見たりした。
そして夜ごはんをごちそうになった後
「ありがとうござい"ましまし"た!」
と言って。彼の家を後にした。

それから20年たった現在、私は建築現場仕事をし、家庭をもち、守られる立場から
守る立場に
貧弱だった体も筋トレを欠かさず行い。ごっつい体になり三十路手前にして仕事場の人に
「お前貫禄あるなぁ!」
と言われるほどに

事故があった、あの立橋では以前から小学生が交通事故に巻き込まれることが
何回かあったが、あの事故以来一度も交通事故が起きていないそうです。
              ・・   
きっとあれから20年間毎日『弟達』を守っているんだなぁ!
と思うと不思議と寂しくありません。

これで話は終わりです、これは完全なノンフィクションです。事故につきましても
検索エンジンで検索すればおそらく、出てくるはずです。

駄文。この一言につきる。
4時から現場にいかないといけんので、失礼します。




と思う三十路手前のオヤジでした。

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