先生の無念

1 :ゆあん:2011/10/28(金) 16:26:46 ID:rYRyUH5U0
私は首都圏で教員をしている者です

これは、今から約16年ほど前の職場にいる男性職員だけの飲み会=野郎会
で警備員さんから聞いた話です
・校名も知っている
・警備員さんの性格
から、これは学校で起こったおよそガチな怖い話です

飲み会で、私が警備員さんに
「夜、学校で泊まっていて何か怖いことなんてありません?」
と何気なくふったことから聞いてしまったのです
聞き終えた後、全員がことばひとつ発さなかったのを覚えています 
私の務める自治体のA中学校(私はもちろん校名を知っていますが)に
その警備員さんがいたときのことだそうです
新卒でまだ若い先生が赴任しました
警備員さんから見ても、毎日とても張り切っていたそうです

そして夏休み
夏季移動教室が行われました
海にある宿舎でそれは行われたのですが、
その先生がふとしたはずみに海辺で足を切ってしまったそうです
ほんの少しばかりの傷だったので、そのまま軽く手当をし、
無事最後まで教室は乗り切れたのだそうです 

ところが…
破傷風菌なのか、貝の毒素なのかよく分からなかったそうですが
あっという間に悪化して、敗血症にまで至り亡くなってしまったそうです
ここからは警備員さんの憶測も入るのですが…
「ただでさえ、念願の教員になって張り切っていた矢先でしょ、そりゃ無念だよね
たださ、この先生の両親がちょっと余計なことしたっていうかさ…」

死んだ先生の両親が、遺体を乗せた霊柩車を、
この世の名残にということなのか、わざわざ学校の正門に廻してしばらく停めていたという
両親にとっては、最後にこの子が学校を見たいだろうという親心だったのだろう…

「つまり、先生の無念っていうか、魂っていうか、なんかそんなものを学校に残しちゃったんだと
思うんだよね」 
さらに警備員さんが続ける
「学校の方も、余計なことしたんだよね…その先生の名前を入れた○○杯っていう
トロフィー作ってさ…
ほら、先生たち、スポーツよくやるでしょ、そのスポーツの優勝者に、それ渡すなんてことも
やったのね
つまり、先生の無念さというか遺恨というか、それだけなら、まあ、どうにかなったのかもしれないけど…
周りが、わざわざ成仏させないような感じ作っちゃったんだよ」 

まず、弱い者、つまりもう「気が亡い者」が最初にその場に惹かれて
連れて行かれた…

それは、いきなり、ショッキングなことから始まったという
突然、学校の正門、霊柩車の停まったその場所で、焼身自殺
生徒たちの動揺は相当なものだったらしい

その騒動がやっと収まったと思ったあたりから
「出る」と生徒たちが、先生に訴え始めた 
それは、昼間だろうと、どこだろうと、校内ならば
あの先生が「いる」し、「見える」

例えば、
と警備員さんが言ったのは
「クラスで教室移動するでしょ、音楽室、あの人、音楽の先生じゃないけど
そこに座っているんだって」
それが「見える」生徒たちがパニックになる
職員室に駆け込んでくる 

そんなことが、日常茶飯事
つまり、校内の「だれ」とか「どこ」とか、そんなものは関係なく
延々と続き始めたのだそうです

「えぇ~…なら…夜ならどうなるんですか」
私は、そこで尋ねてしまったんです…

警備員さんは…
「ホントに聴きたいの?」
と言ったのを覚えています 
「僕も、けっこう警備員生活長いんだけれど、ホント、怖かったというか…辞めようと思った」
のだそうです
警備員なのだけど、職務はあるのだけど…
校庭なら大丈夫かと思い、校庭のど真ん中に椅子一つ置いて、そこで夜を過ごしたって言っていました 
「物」が関係ないそうです
例えば、主事室
夜になれば、警備員さんの宿泊する畳敷きにある「テレビ」
「勝手に、スイッチが入るでしょ、そして、局が合っていない
ザーザーが流れる…」
「その後、その画面の、先生、いるんだよ」 

「物」があるのだけど…
「それ、透かして、見えちゃうの」

例えば、職員室
夜、見廻りで
「職員室に衝立(ついたて)があるんだけど、それ透かして、座っているのが見えるんだよ」
結局、その先生を隠す「物」はない…
校内、特に、夜、どこ見てもいるんだそうです
だから、最後は校庭に行って、見えるならはじめから「そこにいる」って知りたかったそうです
自分の感覚がどんどんおかしくなるのが分かって、たまらなかったそうです
一方、昼間…というか、生徒たちがでかける先々で
次々、事故…怪我をしたりなど、うまくいかないことが増えてきた

とうとう、先生たちはそのためを話し合うために「職員会議」が行われたそうです
先生たちも、あの先生がいるとか見えるは認めざるを得なくなり
校長を含めて「どうすればいい?」とまじめに話し合ったそうです
でも、結論なんか出やしない
ただ暗黙のうちに、あの先生が何か学校に障っているのは
教員、全員がわかっていたそうです 

警備員さん、
あるとき、とうとう「あの先生と話し合おう」って思ったそうです
このままでは、職務も遂行できない
このままでは、生きていくこともできない
だから、あの先生と「話そう」と決めたそうです 
警備員さん、
ある夜、宿泊室に戻ってみたら
あの先生が座っているのが見える
彼、話しかけたそうです…
そうしたら、会話、成立したそうです

※なぜか、その会話の内容がどうだったか、私は失念しています

たしか
「どこにいるの」
とか
「どうして出るの」
とか…そんな感じ、だっのかな 
ただ、最後の警備員さんの話は強烈に覚えている
「どうやって、ここに出てくるの?」
でした
そしたら、先生は、
「それだけは、言えない」
って、言ったって

そして、初めて、警備員さんは、彼が「消える」瞬間を見たって言っていました
横の壁に、足下から吸い寄せられるように、ぐぅーっと飲み込まれていくんだそうです
そして警備員さんが「忘れられない」のは、
最後に頭の方が残って、
「鼻から、目のあたりだけが、壁に残ってさ、顔半分だけ残ったのが忘れられない」
って言っていました 

今も、その中学校は残っています
私も、その自治体にずっと勤めています
幸い、小学校勤務なので、その中学校には近づいてもいないし
その後、どんな様子なのかも知らずにすんでいます

その警備員さんは、まもなく職を換えて職場をお辞めになりました
その職が、当時はとても珍しいと思うのですが
「ペットの墓場」経営だったんですよね
これはあまり関係ないと思われますが… 

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