兵隊さん

720 :sage:04/07/14 21:11 ID:8XRYzdXY
ちょっとスレ違いになるかも知れませんが、まぁ勘弁してください。 

ウチの親父は昭和1桁生まれ。 
終戦の時、九州はM県に住んで居ました。 

終戦直後の9月、親父は姉(俺にとってはおばさん)と一緒に、 
自転車で2人乗りしてM市内へ買出しに行き、 
帰る頃にはもうとっぷりと日が暮れていた。 

買い込んだ食料やら、衣類、調味料を一杯に詰め込んだリュックは重く、 
リュックを背負った姉との2人のりでは、上り坂を登り切らずに、 
2人とも自転車を降りて押さなければならなかった。 
そして上り坂を登りきった辺りで、小休止していた時の事。 

今自分らが上ってきた道を、誰かが上ってくる気配がする、 
2人でそっちの方を見ていると、 
片足を無くした兵隊さんが、杖をついて、その上り坂を 
ぴょんぴょんと飛び跳ねる感じで、結構なスピードで登って来るのが見えた。 

その兵隊さん(血の付いた陸軍の軍服を着ていた)は、 
座り込んでる2人に一瞥もくれず、2人の前を過ぎ去ったそうです。 

「今の兵隊さん、片足無かったけど、歩くの速かったね~」 
「上り坂なのにねぇ、凄いね。」 
「服に血が付いてたね、復員したばかりなのかな?」 
「それより、暗くて足元悪いのに、大丈夫かなぁ。」 

等と会話を交わして、2人してその兵隊さんの行った先の道を見ると 
・・・・・もはや兵隊さんの姿は見えず、 
見えたのは 
フワフワと道の上を去って行く青白い人魂! 

親父もおばさんも、しばらく腰が抜けて立てなかったそうです。 


毎年、終戦記念日が近くなり、親父とおばさんが揃うと、 
決まってしてくれた話です。 

おわり 

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