研修の夜

1729 :あみりたどばんべ:2012/11/10(土) 19:17:28 ID:sVzThN060
休みなんで、また投稿します。

これは、私がまだ学生の時の話。
友人、Aちゃんと研修に行った時の話。

場所は岡山。
確か7月後半くらいでしたかね。

1日目の日中は研修。夕方ホテルに到着し
そこから夕食までは自由行動ということで、同室の
Aちゃんと共に部屋に行きました。

「確か、806号室だったよね」
私がAちゃんに確認するとAちゃんはキーを見ながら
うなづいた。
「うん。ここ、ここ」
部屋の前で止まるとAちゃんは鍵を開けて
先に私を通してくれる。

部屋に入った瞬間、私は何か違和感を感じた。

何と言うか、空気が異様に思かった。

「どうかした?」
Aちゃんは私の後に、大きな荷物をもって入ってきて
立ち止まったままの私に声をかけてきた。

今から1晩過ごすと言うのに、初っ端から「なんか変な感じがする。
空気が重い気がする」
なんて言ったら、怖がらせてしまうし
あんたの方が変な感じだよ、と思われるかも...

と思ったので
「なんでもないよ」
と言って作り笑いをしておいた。

Aちゃんは特に気にする風でもなく
壁際に荷物を下ろしたので、私は窓側に荷物を下ろした。

しばらくして、ピンポーン...
と部屋のインターホンが鳴る。
開けてみると隣の部屋の友人、Kちゃんだった。

「どうぞ~」
私はKちゃんを部屋に招き入れた。

「おじゃましまーす」
と言ってKちゃんは部屋に入る。

...とちょうど壁側のベッドの所まで入った時
Kちゃんの足が止まる。

Kちゃんは部屋をぐるりと見回したあと
一度天井を見てからこう言った。
「ここ、変な感じがする...この部屋じゃなくて
良かった。こんな所じゃ寝られないもん。やっぱり帰りまーす」

Kちゃんは自称見える人、でよく霊体験の話をする。
Kちゃんでもやっぱり嫌なんだ。

帰ろうとするKちゃんを玄関出口まで送りに行くと
Kちゃんは「H(私)、分かってるでしょう?でも言わないんだ...」
クスクスと笑いながらKちゃんは言う。

私はここも作り笑いでかわして部屋に戻った。

言わないよ...
言えるわけないじゃん。

Aちゃんいるし、普通に聞いてたら頭おかしいと
思われてもしょうがないことなんだし...
なんて、人ごとだと思って楽しんでるKちゃんに少し
心の中で抗議していたが、Aちゃんは気にしている風でもなかったので
忘れてしまうことにした。

夕食後、私とAちゃんは806号室へ戻る。

「明日は、どこに研修だっけ?」
私が聞くとAちゃんはパラパラと予定表を
めくりながら答えてくれた。

「明日は少し早めに起きな、遅刻してしまうね」
Aちゃんは携帯のアラームをセットしながら
寝る準備をしていた。

「今日は疲れた?」
私が聞くとAちゃんは何度もうなづいて見せた。

「私も今日はかなりしんどかったから
早めに寝ようか~」

「うん。寝よう」
Aちゃんは着替えを済ませて
もう寝る準備万端だった。

「あ、カーテン閉め忘れてた...」
私はベッドから降りてカーテンを右側、左側と閉めた。

ベッドに戻ろうとして振り返った時、背後でシャーっと
言う音がした。
Aちゃんは私の後ろをじっと見ていた。

振り返ると、左側のカーテンが...
開いていた。

「え...あ、何か閉めるの失敗したみたい」
私は慌てて戻りカーテンを閉めて、ベッドへ戻った。

「何だたんだろうね」
私がAちゃんに言うと
「自動のカーテンなんかもしれへんよね。
だから、何故か勝手に開いたとか...」

「うん、そうやんね」
言った瞬間に、またシャーっと
音がする。

振り返ると、また左側だけ
カーテンが開いていた。

「自動...何かなぁ?」
私はそこらを探してみたけれど
スイッチらしきものはなし。

リモコンみたいな感じのもなし。

「まぁ、とりあえずもう一回閉めるわ~」
私は努めて冷静にAちゃんに言った。

カーテンの裾を持ち今度は小声でこう言った。
「今度開いても、私はもうカーテンを閉めません...」

シャッとカーテンを閉めて
ベッドに戻る。

その後はカーテンは開かなかった。

しばらくして
Aちゃんはボーっと天井をにある、エアコンの
ブラウン管をずっと見ている。
「どうしたん?」
私が聞くとAちゃんは「なんでもないよ」
と言って、布団にもぐってしまった。

私も、すぐに布団にもぐる。

長い夜になるとも知らずに... 

1730 :あみりたどばんべ:2012/11/11(日) 00:31:21 ID:Jel6YSYA0

この日はかなり寝苦しかった。

布団が異様に重い...


Aちゃんは寝ているのか、スースーと
寝息を立てている。

私は眠れなくて、何度も寝がえりをしていた。

眠れないまましばらく横になっていて
ナイトスタンドの時計を確認するとAM2:15を示していた。

しばらくしてウトウトし始めた時、やっぱり、体が重い...

ふと足元に気配がする。
私がかばんを置いているすぐ横に。

そこには
白い着物を着た、中年のおばさんが立っていた。

痛んだ髪の毛がちょうど胸の下あたりまである。
右手には、包丁(出刃包丁...というやつだろうか)を
持っている。

でも、足もとにずっと立ったままだった。
何をするでもなく、ただ立っていた。

気持ち悪いなぁ...と思いつつも
私は実は普段からこんなことが多かったので
叫ぶでもなく、眠くなるまで待っていた。

いつ眠ったのかは、分からないけれど、起きたら
AM6:10だった。

うわ、ちょっと寝坊した!
私は慌てて準備をしてホテルを後にした。

2日目も無事に研修は修了し
この日は旅館に宿泊した。

4人部屋だったので
Aちゃんの他にBさん、Lさんも部屋にいた。

Aちゃんと皆はワイワイ雑談していた。
夜も更けて、私は寝る前、昔から肌身離さず身に
付けていた、お守りをかばんから取り出した。

お守り袋から弘法大師の姿が彫られた
お守りを取り出した。
そのお守りは堅くて、どれだけ落としても傷一つつかなかった
ものなのにその時は......
端々にヒビが入っていた。

その瞬間背筋にゾクッと鳥肌が立つ。
このお守にヒビが入るなんて相当強い力がないと
無理なはず。
元来浮遊霊は近づくことすらできないと
言われてる位の代物なのに...

さすがにこれはちょっとやばいな。
今になってから身の危険を感じてもしょうがないけれど
危なかったなぁ。 

そんなこんなでぞっとしながらも研修は終わり
帰ってから、お守りをくれたお寺へお土産の菓子折を持って
挨拶に行った。

「あんた、どこに行ってきた?」
着くなり、言われたのがこの一言。

「岡山...」
私がお守りを手渡すと、触るのも嫌とばかりに
線香を焚き始めて、お守りを清めてから話し始めた。

「岡山か...岡山はね、多いんだよ。戦争もそうだけど
閉じ込められた人がたくさんいた地域だからね」
と言った。

私が研修で行ったのはまさに
ハンセン病で、一か所に閉じ込められていた人たちが
当時住んでいたところだったのでこのときにまた鳥肌が立った。

「このお守りはね、憑かれやすいあんたのために
祈祷してあるの。これがヒビ割れるってことは
悪霊になってるんだろうね」
そう言って新しいお守りをくれた。

「無事に戻ってこれて良かったね」
最後にそう言っていた。


かばんの中にお守りを入れていたから
確かに、かばんからこちらへはこなかったなぁ...


久しぶりにぞっとする体験をしてしまった。



以下、ちょっとした後日談...


これは2年後のお話なんですけど。

私は卒業して以来、そんなことも忘れていたのだけれど
ついこの間、Aちゃんに会ったとき、この研修の話になった。

「H(私)ちゃん、覚えてる?2年前の研修の時のこと」

「覚えてるよ」
私が答えると、Aちゃんは何か思い出すように
目を伏せながら話始めた。

「あの時ね、寝る前なんだけど
ずっと、どこかから足音が聞こえてたよ。パタパタパタパタ
部屋中を歩いてる足音が...」

私は背中にあの時のようにゾワリと鳥肌が立つのを感じた...


Aちゃん、実はそれは女の人で、私たちが寝てるのを
夜中じゅうずっと見てたんだよ...
なんて私には言えないから、これは私だけの秘密にしておくね。

ちなみに、ほかには
テレビの音量が勝手にMAXまであがった部屋とか
勝手にテレビがついた部屋、ドアを乱暴に叩く音がして
出てみると誰もいなかった...て言う部屋があったらしい。

あと、帰る前にスタッフに確認したら
カーテンは自動ではないので
勝手に開いたりは......しないそうです。 

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