残留思念

170 本当にあった怖い名無し sage 2013/11/01(金) 13:57:47.99 ID:dfQqFvYbO

あんまり怖くないかもしれないけど。 

昔々あるところに。平平凡凡な少年がいました。 
昔は家族みんなと同じ部屋で寝ていましたが、少し大人ぶりたかった少年は、最近一人で寝るようになっていました。 
そこは仏壇がある部屋でしたが、その時の少年は、「霊だと?俺なんか霊長類だぜ?会いたいわー」だったので、気にせず寝ていました。 

ある日のこと。怖い夢を見たいがために、少年は胸の前で手を組んで寝ていました。しかし、怖い夢など見ませんでした。完全に熟睡していたのです。 
その時です!バチン!といきなり何故か少年の目が開き、少年は金縛りにかかりました。全く動けません。しかし、幽霊など、何もいませんでした。ビリビリビリと身体が痙攣し、声も出ませんでした。 
三分間待ってやる、でしたでしょうか?ようやく身体が動くようになった少年は、あまりにも怖かったため、水を飲んで落ち着こうと、居間を通って台所へ行こうとしたところ・・・! 
少年は見てしまいました・・・・両親たちが。 

・・・セックスしていた所を。 

後はまぁ、彼らが幾らごまかしても、激しい腰の「打ち付け『愛』」の現場に遭遇してしまった少年には、「ごゆっくりどーぞ」としか言えず、コーラを一気飲みしたのでした。 


今になって、ですが、もしかしたらあの時の金縛りは、その行為で産まれてきた子供が、少年や家族に何らかの害を加えてしまう為に、先祖が止めさせろ、と起こしてくれたのかも、と青年は思うのでした。 

今まで誰にも話したことのなかった青年には、霊感体質(あくまで噂)の女の同僚がいました。たまたま、そいつとやった仕事がうまく行き、一緒に酒でも飲まないか、という話になりました。 
酒も進み、普段酔わない青年は、まだシラフでしたが、どうせならと思い、その話をしたところ。 

「あぁ・・・俺さん、子供好きですよね?」 
「うん、好き。今嫁さんと頑張ってる」 
「・・・そうですか」 
「なんで?」 
「・・・いえ、でも他人の子供まで可愛がりすぎるのも良くないですよ」 

よく意味が分からなかったので、青年はおでんの大根を代金として聞きました。 
「俺の子供が呪われる、とかじゃないよな?」 

「違いますよ!」 

大声で言われたので、一瞬酒場が固まりましたが、ケンカしてるわけじゃない、と分かって貰えたので大事にはなりませんでした。 
ビールを口に含み、彼女は言います。 

「・・・子供は、両親以外でも、自分が信じられる、愛してくれると思った人間には好意を向けるんです」 
「うん、それで?」 
「多分、『その娘』は、昔俺さんが助けた、もしくは優しくしてあげた小学生だと思うんです」 
「・・・でも、俺が金縛りにあったのは高学年だぜ?」 
「一年生くらいの子供を、助けたことはありませんか?」 
「あ・・・」 

青年は思い出しました。昔、学校でお漏らしをしてしまった少女を助けた事を。ーーーそしてその少女が、その次の日に、若者の暴走車にひき逃げされ、死んでしまったことを。 

「・・・その娘が俺に?」 
「おそらく、ですが。残留思念というのは、成仏しても残るケースが多いんです。憎しみは勿論、その逆に愛も」 
「そうか・・・」 

ふと、少年は気付きます。ならいい話じゃねーの?って。 

「じゃあ、なんで構いすぎるとダメなんだ?」 

「その子供の親が、死んだときに貴方を呪うからですよ」 
「・・・は?」 
「考えてもみてくださいよ。自分の子供が先に死んで、やっと霊界で面倒が見れると思ったのに、その子供は自分の知らないヤツを見ている」 
「・・・」 
「それが幼い子供であるほど、そして、時間を取られれば取られるほど、霊にも憎しみがたまるんです。精霊が悪霊になることもあるのは、知ってるでしょう?」 

あまりにも女性が真剣だったので、青年は彼女の声しか聞こえず、我に帰ったときには、ブル!と身震いしてしまったのです。 

「・・・そういうこともあるんだな」 
「今は俺さんに、ぎゅーとら(?)様も憑いているから大丈夫ですよ。ツーリング好きでよかったですね」 

後で聞きましたが、ぎゅーとら(?)様、と言うのは、強力ながら優しい神様だそうです。いつもはK県の少し古ぼけた神社に住んでいるらしいので、いつかまたお尋ねしたいと思います。 
飲み屋を出て、青年は彼女にお礼を言い、その女性と別れました。 

その一週間後に、彼女は転勤になってしまいました。元々影も薄く、あまり人に覚えて貰えなさそうな人でしたが、俺はあの夜のことを今でも鮮明に覚えています。 

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