お礼

814 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM sage 2013/11/28(木) 18:39:40.55 ID:cqoM1j4y0
山仲間の話。 

秋の山で単独行していた時のこと。 
夜、焚き火の前に座っていると、突然猛烈な吐き気に襲われた。 
とても堪らず夕食に食べた物すべて、盛大に地面の上に吐き戻してしまう。 

嘔吐き終わると、吐き気は嘘のように消え去った。 
大きく息を吐いて安堵していると、背後の藪から声がする。 

「あ~、すっきりした」 

慌てて藪の中を確認したが、そこには誰の姿も見つけられなかった。 
その夜は落ち着かないまま過ごし、朝を迎えたのだという。 

次の夜、昨晩のことを思い出しながらそこはかとなく不安になっていると。 
背後で何者かの気配が沸いた。 

振り返るよりも早く、背筋を電気が走り抜ける。 
凄まじい快感が彼に襲い掛かったのだ。 

「!!!!!」 

声にならない叫びを上げて、意識がブツリと途切れる。 
気が付けば、テントの前で俯せに倒れていた。 
短い時間だが失神していたらしい。 
しばらく立ち上がることが出来なかったそうだ。 

「おれいね」 

何処からかそんな声が届いたが、気にする余裕もなかったという。 

「凄かった……本当に凄かった。 
 今も思い出そうとするだけで、色々と大変なことになりそうなんだ。 
 ……下着とズボンを川で洗う羽目になったのは哀しかったけど」 

切なそうにそう語る彼の前で、私は一体どんな顔をしていたのか。 
今でもそれが気になって仕方ない。 

前の話へ

次の話へ