呼ぶ声

197 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/09/25(木) 10:27:39.29 ID:/vb8Llki0.net
ずいぶん前のことだが、中学の夏の合宿で「氷川キャンプ場」に行った。 
当時は今ほどアウトドアの安全管理概念が発達してなくて、むきだしの川原にテントを張った。 
引率教師が、一応、管理人に相談したみたいだが、数日間、雨らしい雨が降ってないみたいな 
ことで、川原に張ることがOKされたんだ。 
川原は楽に張れるんでおれたちは大喜び、すぐに張り終えてしまった。 
そのため時間が余ってしまい、夕飯の仕度まで自由時間がもらえた。 
おれは先生に釣道具を借り、みんなから離れて川の淵のところまで行ってのんびり釣を始めた。 
心が開放されてからっぽになり、心地よい眠気のようなものが忍び寄ってくる。 
そのとき、おれは奇妙な声を聞いていた。 
「きゃはは、タカちゃん、あはははは、…ちゃん、タカちゃん、クスクス」 
「タカ…ちゃん、はははは、タカ、きゃははは…ん、タカちゃん!」 
おれは隆○っていうんで、子供のときはタカちゃんって呼ばれてたんだが、そのころの懐かしい 
呼び方で、誰かがおれを呼んでる。 
不思議なことに、地から湧くか天から降るか、という感じで上とも下とも前とも後ろともつかない。 
川音にまぎれる甲高い声で、子供か女性の声に近い。 

楽しげにきゃっきゃと笑いさざめきながら呼ぶのだが、人間の声ではない気がする。 
「なんだろう?変だな」と、頭のすみのほうで本能が警戒してるんだが、すっと気の遠くなるような 
快感があって、意識がしっかりしない。 
あんまり回りじゅうから呼ぶんで、方向感覚がマヒして、自分が立ってるんだかどうしてるんだかも 
意識できなくなってくる。 
いきなり、 
「○○っ!」 
と、野太い男の声で呼ばれて、おれは右に拠れた。 
淵の水面が目の前にあったからだ。 
呼んだのは探しにきた先生で、 
「ばかっ、散々、呼んだんだぞ。さっさと飯食え!いつまで釣してんだ。おれだって釣りたかったのに」 
ってな感じでプリプリしていた。 
わずかな時間のつもりだったが、みんなは夕飯を食い終えていたほどの時間がたっていた。 
あの声は妖精ではないかと思っている。 
「サイレーン=ライン川でしばしば船乗りをまどわし、水に引き込んだといわれる魔物」系のモノ 
かもしれない。 

おしまい 

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