私のお寿司

764 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/02/28 04:12
あれは会社の内定者懇親会の帰りのこと
二次会まで参加した俺は家路につく頃にはもう11時を回っていた。
俺は飲み会の時はほとんどつまみを食べないで酒ばかり飲んでるタイプなので
家に帰る頃にちょうど腹がへった。なので家に帰ったら食べようと思い、
駅前の松屋で弁当を買った。そしてその弁当の入った松屋印のビニール袋を下げて
家へと向かった。家に帰るためには人通りのある大通りを通って帰る道と
近道になるのだが薄暗い淋しい道の二つがあり、男の俺はいつも近道で家に帰っていた。
その日もいつものように近道を通って家に向かっていると
後ろから女の人のハイヒールの足音が近づいてきた。ハイヒールの音を聞いた感じだと
どうやら、そのひとは小走りなようだった。
この道は薄暗いので、夜はサラリーマンのおっさんが歩いていることはあっても
女の人は全くと言っていいほど通らない。一瞬変だなと思ったがすぐにそんな思いは
どこかへ言ってしまった。ハイヒールの音はどんどん近づいてくる。
そして俺のすぐ後ろまで来た。ちょっと嫌な予感はしたのだが、俺は思い切って
振り返ってみた。するとそこにはスーツ姿の同じ年ぐらいの女性が歩いていた。
一瞬、振り向いたら誰もいないんじゃないかと思っていた俺は人がそこにいたことに
安心して気が少し緩んだ。すると後ろを歩いていた女性が俺に声をかけてきた。
「すいません」
現実味のある女性の声だ。幽霊だったもっと現実味がない声だよなきっと。
俺はそう思ってまた安心した。

「え?なんですか」
俺は答えた。もう普通の人間同士の会話なんだから何も恐くない。
するとその女性は俺の持っている松屋のビニール袋を凝視し始めた。
「そのお寿司私のなんですけど」
女性は俺のビニール袋を凝視したままそういった。
「は?これは松屋の弁当ですけど、駅前で買ったんですが?」
俺が答えると
「うそをつくな!わかってるんだぞ!」
女性が野太い声で突然怒鳴りだした。俺はびっくりして危うく袋を落としそうになった。
ひょっとしたらマヌケな声をあげていたかもしれない。
「じゃあ見せますから」
俺はおそるおそるその女性にビニール袋を開いて見せた。
女性は袋の中に顔を突っ込まんばかりに覗き込む。
「じゃあ、私のお寿司はどこにいったのよ~」
今度は突然その女性は道端に座りだしてわめき出した。
喚いてる言葉はよくわからないものだったが、時折すすり泣いているのは
なんとなくわかった。しばらく俺はあっけにとられて呆然としていた
女性はわんわん喚いているがその中で聞き取れる言葉が何度か耳に入ってきた
「返せ…返せ…返せ」
その言葉が聞き取れた時、俺は無性に危険が迫っているような気がしてきた。
俺は座り込んでいる女性を尻目に本気で家まで走った。
途中で何度か振り返ったが追ってきてはいないようだった。
そして無事に家に帰り着くことができた。
あの女は一体なんだったんだろう。
どんなに遠回りになってももうあの道だけは通らないようにしている

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