煙管坊

785 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2012/06/27(水) 21:59:04.14 ID:gaM7O2jj0
知り合いの話。 

単独で山を縦走していた、ある夜のこと。 
テントの外、焚き火の側で煙草を吸っていると、誰かが声を掛けてきた。 
「済まないが、煙草を一本分けてくれないか?」 
見れば、坊主頭で作業服姿の男性が一人、こちらへと近づいてくる。 

「いいですよ」と懐から箱を取り出し、一本抜いて分けてやる。 
中年に見える男性は頻りに恐縮しながら、美味しそうに煙を吹き上げた。 
やがて礼を述べると、男は闇の中へ戻って行った。 

「こんな夜中に、何処から来たんだろ?」 
気にはなったが考えてもわからず、そのまま寝ることにした。 

翌朝目覚めると、荷物の中から煙草が失くなっていた。 
それも、彼が昨晩男に見せた箱の中の煙草だけ。 
半分以上は残っていた筈なのに。 

他に仕舞っていた煙草は無事だったので、やはりあの坊主頭が犯人に思えた。 
しかし、どうやって盗ったのかがわからない。 
そんな暇は与えてないのだが。 

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