アパートの換気扇

155 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/11/20 17:54
「アパートの換気扇」 作:ダストマン△

お気に入りの長井秀和だけをチェックするつもりだった高子さん。
気がつけば爆笑オンエアバトルを最後まで見てしまい大慌て。
みそ汁おじやを温めていたのをすっかり忘れていたのです。

台所に飛び込むと一面に煙が立ち込めています。
ただ弱火だったのが幸いし、具を焦がしただけで済んだようです。
換気扇では排煙が追いつかないため、玄関のドアを開け放ちました。

「なんだ、なんだ?」「え、うそ、これって家事?」
道ゆくは飲み帰りの学生さんでしょうか。呂律の回らない様子で近寄ってきます。
容姿にはちょっと自身のある高子さん。事情を説明してそそくさとドアを閉めました。

さて、次の日からが大変でした。鍋のこげ落としではありません。
隣室から女性の変死体が発見されたのです。まだ若い専門学校生でした。
後の警察発表によると死後3日前後。おそらく自殺ではないかとのことです。

高子さんはすぐに引っ越しましたが、あの日の噂話からは逃れられません。
出所は酔っぱらいの学生さんでしょうか。まことしやかにこう囁かれているのです。
死体発見前夜、女の姿を見た。あれは幽霊に違いない――。

高子さんはその度に心を痛めます。(あれ、本当はわたしなんだよね……)
でも、高子さんは友達の気遣いを知らないのです。本当の噂はこうです。
あの夜、二人の女が同時にドアを開けたけど幽霊じゃない方の女、無事なの?

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