自殺の名所

782 名前:長いです。すみません。 :03/10/10 17:33
今年の春のことなんですが、土曜日に友達と集まってダラダラしてる時に、テレビで自殺の話をしてたんです。
1ヶ月くらい前に学校で自殺した子がいて、その時は自殺って言葉に敏感になっていたせいか、妙にシーンとなってみんなテレビを見ていました。 
CMになってから友達の一人が突然、「私の家の近所に自殺の名所があって、よく古いロープなんかが木からぶら下がってるよ」と言い出しました。
じゃあちょっと行ってみようか、みたいなことになって、言い出しっぺの友達(T)と私ともう一人(K)の3人で、そこへ行くことになりました。 

Kが自転車を取りに行ってる間に、私達は先にその場所へと向かいました。途中コンビニに寄ったりしてけっこう時間をかけたつもりだったんですが、Kはなかなか追いついてき ません。
そうこうするうちに、自殺の名所だっていう山に到着しました。 
入口に自転車から降りて山の中の道を少し歩きました。
まだ昼間で明るかったし別に嫌な雰囲気もしなかったので、どんどん奥の方へ進みました。 

突然、どこかで、パンッパンッと手を叩くような音がしました。
私とTは顔を見合わせましたが、もちろん二人とも手なんか叩いていません。
「鳥か何かかなぁ」とか言っていると道の先の方からおじいさんが歩いてくるのが見えました。 
(ああ、あの人が手を叩いたんだ)と思ってその場に立っていると、おじいさんが大分離れたところで立ち止まりました。
しばらくそうしていると、おじいさんの方から声を掛けてきました。 
「おーい、見えるか?」
意味が分からなかったのですが、Tは「見えますよー」と返事しました。
すると、おじいさんはゆっくりと近づいて来て「お前らなんでこんな所におるんや?」と聞きました。
私達が「自殺の名所を見に来た」と答えると、おじいさんは「確かにこの辺りは自殺する奴が多いけど、ワザワザ見に来るって変な趣味やな」みたいな事を言いました。
そして続けて妙な事を言ったのです。 

「さっきもお前らと同じ歳くらいの女の子が歩いていたんで声を掛けたけど、まるっきり無視されたぞ。こっちが見えてない感じやったな」 
よく聞いてみると、歳格好からどうやらKらしい・・・
Kの自転車は入口になかったし、おかしいなぁと思いながらもKを見つけるためにも先へ進むことにしました。 
そこから少し行ったところで私はギョッとして立ち竦んでしまいました。
薄暗い林の中の木に何かが貼り付いている、と思ってよーく見てみると藁人形だったのです。
五寸釘が何本か刺さっていて、かなり古いものに見えます。 
Tを呼ぶと「うわー何コレ。初めて見た~。きしょい~」などと言って、持ってきたデジカメで写真を撮っていました。 
そこから少し進むと道は終点で、あとは山があるばかりでした。思い出しても分かれ道は 
無かったし「じゃあKはどこへ行ったんだろう」と二人で少し話し合った結果、周りをよ 
く見ながら引き返そうということになり、私達は来た道を引き返し始めました。 

さっきの藁人形が刺さっている木を通り過ぎたあたりで、Tが「わっ」と声を上げました。 
上を指差してこっちを見ています。 
指の方向を見ると、道の脇の木の枝にロープがぶら下がっていました。
枝が道の上に張り出しているので、ロープは私達の頭上に垂れ下がっています。
さっき通った時にはなかったはずなのに・・・
端の所に結び目があって、そこから先が切れたみたいになっていて、風もないのに プラン プラン と揺れていました。 
そこから早く離れたくて、私は歩き出しました。
Tはまた写真を撮っていましたが、私が「行くよ」と声を掛けると、慌てて走って来ました。 
それからしばらく歩きましたが、結局Kの姿は見かけませんでした。 

山の入口に着くと、私達の他にもう一台自転車がありました。
私はKの自転車を見たことがなかったのですが、Tが「これKの家の自転車と違うかったかな~」と言うので、Kの携帯を鳴らすことにしました。 
すると遠くから呼び出し音が聞こえます。
音の方向へ向かうと、かなり手前の道端にKの携帯が落ちていました。
Kはいつも携帯を鞄の中に入れているので、落とすというのは考えられません。 
私は「もう一度山に入ろうか?」と言いましたが、Tが「もうあの山へは入りたくない」と言ってもの凄く嫌がりました。
仕方がないのでKの家に行きましたが、誰もいません。 

そのままKの家の前で待っていると、しばらくしてKのお兄さんが戻ってきました。
私達は事情を説明して、お兄さんと一緒に山へ引き返しました。
Tは相変わらず山へ入りたがろうとしなかったので、私とお兄さんの二人で山の中の道を歩いていくことにしました。 
しばらく歩くと、さっきのロープの所にKが倒れているのが見えたので、慌てて駆け寄りました。
首に古いロープが輪になって巻き付いていましたが、息はありました。 
私は電波の届くところまで走って携帯から病院に電話しました。
電話を終えてもう一度戻ろうとすると、山の奥からKとお兄さんが歩いてくるのが見えました。
Kは、ふらふらしていましたが一人で歩いていました。
それを見た私は、急に力が抜けて泣き出してしまいました。 

それからKは病院に行って一日入院しましたが、特に異常はないということで家に戻りました。
後で聞くと、家に自転車を取りに帰ってからの記憶が全く無いと言うことでした。 
その時、お兄さんの話も聞いたのですが、私が電話を掛けに行ったあと、Kに声を掛けたりしていると、上の方でパンッパンッと手を叩くような音が何度かしました。
不思議に思い見上げても誰もいないし、音の原因は分からなかったのですが、なぜか、ぶら下がっているロープが プラン プラン と揺れていたそうです。 

話は前後するのですが、山へ行った次の日、電話でTの家へ呼び出されました。
行ってみると、Tは昨日撮った写真を見せてくれました。
全体にピンぼけで、特にロープの写真は何が何だか分からない感じでしたが、藁人形は一応写っていました。 
「・・・ここ見てよ」
Tが指差す場所を見ると、木に変な影のようなものが写っていて、それが人の顔のように見えます。 
「・・私、ロープのところで写真撮ったあとで自分の後追っかけて走ったやんか。
あの時振り向く直前にな・・お婆さんが木の中から出てくるの見えてん」
震える声でTが言いました。
「だから、もうあの山には入りたくないねん・・・」 
それ以来、私もその山には近寄らないようにしています。 

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