バイオリン

73 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/08/26 07:55
以前、後味悪いスレに貼ったネタですが 

バイオリン 1/3 

ある町の骨董屋。 
店に並べられている骨董品の中には一挺のバイオリンがあった。 

ある日、店に一人の男の子がやって来ると 
店の主人に「あのバイオリン、いくらですか。」と訊いてきた。 

主人が値段を言うと、 
男の子は「・・・全然足りないや。」とうつむいてがっかりした様子だったが 
顔を上げると、「お金もって、また来ます。」と言って帰っていった。 

数日後。 

主人は男の子が新聞配達のバイトを始めたことを偶然知る。 
男の子は、その体には大きすぎる自転車に新聞を積んで坂道を登っていた。 
一生懸命ペダルをこぐ男の子の姿を、主人はじっと見つめていた。 

それからしばらくたったある日。 

主人がいつものように店番をしていると、身なりのいい男性が店を訪れた。 
男性は店の中の骨董をいろいろと眺めていたが、バイオリンに目を留めると 
主人に向かって「あれはいくらかな。」と訊ねてきた。 

主人が「いえ、あのバイオリンは・・・」と口ごもると 
男性は「なんだ、売り物じゃないのかい。しかし、私はあれが気に入ったんだ。 
     これでどうだろうか。ぜひ譲って欲しい。」と 
バイオリンの値段の何倍もの額のお金を取り出し、主人の前に置いた。 

主人は思いがけない金額を前にして、少しの間考えていたが、やがて 
「申し訳ありません。やはり、お売りするわけにはいきません。」と男性に告げた。 
「やっぱりダメか。残念だが、仕方ないな。」そう言うと男性は帰っていった。 


それから数ヵ月後。 

「あのバイオリン、まだありますか?!」 
新聞配達で貯めたお金を持って、男の子が店にやってきた。 
しかし、店の中にバイオリンは見あたらない。 
男の子がキョロキョロと店内を探していると 

「待ってたよ。」 
主人は男の子に微笑みかけ、あの日以来、誰にも買われないように 
奥の棚にしまっておいたバイオリンを持ってくると、男の子の前に差し出した。 

ぱあっと笑顔になった男の子が目をキラキラさせて、 
バイオリンを手にしようとしたその時。 



「   バ  キ  ン  ッ !   」 



主人の手がバイオリンをへし折った。 

呆然としている男の子に向かって、主人はうれしそうに一言。 

「 これが私の楽しみ。 」 

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