ボヤの出た部屋

359 名前:357 :03/07/21 23:58
今から約3年ほど前ですが、私はある建設会社で働いてました。 
県の指定工事業者でもあったその会社では県営住宅の保全管理もしていました。
私は県営住宅の保全業務を任されており、何かと下らない補修等で団地まで見積もりに出かけたりしていました。 
ある日の朝、住宅○○公社から一本の電話があり、
「先日○○団地の3○○号室でボヤが出たそうですが、調査にはいかれましたか?」 
という電話がかかってきました。
いきなりの公社からのボヤの連絡に戸惑いながらも、慌てて団地に向かったのです。 

当然消化活動は前日のうちに終わっていたのですが、警察と消防が複数名いて現場の調査に来ていました。
家の中に私も入り被害状況等を調査していると、自然と警察とその部屋の住民との会話が聞こえてきます。
警察「しかし働いてもないのに、なんでこんな物がたくさんあるんだ?」
住民「・・・・」
警察「おかしだろう?」
住民「・・・・」
会話にならないやりとりが繰り広げられているようでした。
そうこうしていると玄関先に一人の男が立っています。
電力会社の人でした。
「あの・・・お取り込み中ですか?電気代の集金に来たのですが・・・」
警察「電気代も払えてないのにこんな物がたくさんあるのはおかしいだろうが!」
住民「・・・・」 
その部屋はまるでどこかの事務所のように電化製品や高級家具等が数多くあったのです。
確かに県営住宅なのに玄関ドアに消費者金融の看板を上げている住人も見かけた事がありますし、あきらかに暴○団にしか見えない人が出入りしたり、高級セダンや外車等で出入りしている人もたくさん見かけたりすることも多々あります。
私は今回ボヤを出した住人もそういった類いの人だったのかな?と心の中で思いました。 

そうこうしている内に宅内の被害状況の調査も終わり、引き上げようとすると警察と消防も引き上げる所で、警察は
「また後日話しを聞きにくるからな」
と言ってました。
私はボヤのあった団地の棟の横に大木が立っており、公社からの依頼で樹木の伐採も見積もりをしなければいけなかった為、樹木の写真を撮ったり幹周を計ったりしていました。 
ふと、横の通路を見るとボヤを出した部屋の住人が大事そうな書類や、家財道具?等を車に運んで行ったり来たりしているのが見えました。 
私は見積もりを終わらせ、会社に帰り翌日の樹木伐採の準備をし帰宅しました。 

明けて翌日私はチェーンソーを載せた2トンダンプで問題のあった棟に向かい、前日に見積もりをした大木を切りはじめました。
10時ぐらいに休憩をいれようと腰掛けると昨日の電力会社のおじさんがボヤのあった部屋に向かっているのが見えました。
すぐに休憩も終わらせ再び樹木の切断をはじめて5分くらいたったでしょうか?
人の気配を感じ横を見るとさっきの電力会社のおじさんが立っていました。
おじさん「あの・・・・仕事中にすみませんが、昨日集金に行った部屋なんですが様子がおかしいんです。
一緒に見にきてもらえませんか?」
私はよく理解出来なかったのですが、とりあえず一緒に見に行く事にしました。 

ボヤのあった部屋は団地の3階で、階段を上がっている最中にも私は
「昨日は集金出来なかったんですか?」
おじさん「昨日は住民の方から翌日に集金に来てくれと言われたので・・・・」
私「様子がおかしいって、また払ってくれないとかじゃないでしょうね?」
おじさん「それならいいんですが、玄関を開けて左側を見て下さい。」
私「???、玄関は開いてるんですか?」
おじさん「玄関は開いていました。」
私はさらに 
「?????」 

部屋の前に着きドアノブをゆっくりと回し、引いてみると確かに鍵は開いています。 
私「(小声で)すみませ~ん」
おじさんまたもや「左側を見て下さい。」 
ここで部屋の間取りなんですが、玄関を開けると廊下があり正面は和室、 
右側が台所、左側が脱衣場、便所、浴室となっています。 
とても天気の良い日で、台所側からは太陽の光も差し込んでいます。 
その天気の良さからは考えられないほど静けさに満ちた部屋でした。 
言われてゆっくり左側を見てみると
「????」
廊下に手が飛び出していました。 
しかもえらく高い位置で・・・・。
その手は固くこぶしを握っており、紫色になっています。
明らかに生きている状態ではないことが一目でわかりました。 
恐る恐る中に入ります。一歩、また一歩、除々に脱衣場の中が見えてきます。 
まず見えたのは椅子が倒れています。
そしてまた一歩・・・・。 
今度は足が見えました。
もちろん宙に浮いています・・・・。 
恐る恐る浮いている足先からゆっくり上を見上げてみましたが、恐怖のあまり腕の付け根あたりで目をそらしてしまいました。 

一旦部屋を出て会社に電話をかけ、連絡とり事情を説明すると社長が
「第一発見者は電力会社のおっさんやから警察に通報してもらえ」と・・・・。
その後警察が慌ただしくやってきましたが、私は何ごとも無かったかのように大木を切っていました。 
また別の日にその電力会社のおじさんに会う事があったため、話しを聞くと事情聴取は20分くらいで終わったそうです。 
しかし前日にも警察に悪態をつき、元気に家財道具等を車に運び出す姿を目撃していた私にとって、翌日には首吊り変死体というギャップはかなりの衝撃でした。 
後の調べでは脱衣場の上部にある汚水管にベルトを引っ掛けて首を吊っていたそうです。 
注)県営団地はメンテナンス等の利便性を考えパイプがむき出しに配置されています。 
今ではそのボヤ&首吊りのあった部屋は貸し出しもされず、開かずの間になっています。 

長文、駄文ですみません・・・・。 しかし約3年前に体験した実話です。 

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