ガラス猿

212 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage New! 2012/11/13(火) 18:30:43.82 ID:qFVvFi5t0
知り合いの話。 

昔、猟師をしていた頃に奇妙なことがあったらしい。 
樹上に猿を見つけ、見事にこれを射貫いたのだが。 
甲高い悲鳴を上げた猿は、次の瞬間、真っ白に変じた。 

全身の毛の色を一瞬で失った猿は、その直後地上へ落下した。 
遠耳に小さく“ガシャン!”という音が聞こえた。 
ガラスか陶器が割れたような、そんな硬い音だった。 

落下地点に辿り着くと、骸が何処にも見当たらない。 
ただ、ガラスのようにキラキラする粉が、ぶちまけたように堆積している。 
粉末の中に、歯の付いた猿の顎骨が、ぽつんと転がっていた。 
その日はそこで山を下りたのだという。 


前の話へ

次の話へ