無数の手形

塩麹@特選怖い話:2016/08/27 01:08 ID:0kSUFp9c
今から10数年程前の夏の話です。

無数の手形は当時、人生初のマイカーを持てた喜びで至る所にドライブに出かけていました。
そんなある日、とある山道を走っていたら、急にエンジンが停止してしまいました。ガス欠かな?とも思いましたが、ガソリンはたっぷり入ってました。ボンネットを開け中の様子を見てみると、素人目には異常がある様には見えません。

困り果てて、取り敢えず車の中に戻りました。山奥すぎて、携帯も繋がりません。途方に暮れていると、トランク側の方でドスンという音と共に何かが乗った様な揺れが有りました。

ん?岩でもぶつかったか?

と思いましたが、突如として暗雲が立ち込め、昼間なのに当たりが暗くなり始めました。

もう怖くなって、半分泣きっ面で車のキーを回してみると、それまで何度やっても掛からなかった車のエンジンが、その時は何事も無かったかの様にかかりました。

急いでその場を離れ、家に帰る事にしました。

その場から離れ、1キロ走るか走らないかの所で雲は嘘の様に消え、空は青く澄み渡ってました。さっきの場所の方角を見ても雲なんてありませんでした。

家に着くなり、母親にさっきあった出来事を話しすると。
「あんたの車、中古で買ったから故障してんじゃないの?」と言われる始末。
その調子で母親は車の様子を見に行きました。

それから1分もしない内に母親が血相を変えて戻ってきました。
「あんた何処走ってきたの?ちょっと来てごらん」

車に行って見てみると。

車の至る所に人の手形が無数についてました。家に入るまで怖くて、車の事なんて見て無かったので気づきませんでした、と言えば嘘になります、だってフロントガラスにもついてましたから。
特に手形がついていた所は、トランクについているウイング付近で、まるでそこを押さえて車を行かせまいとしていたかの様でした。

最後までお読み下さいまして、ありがとうございます。

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