コツコツ峠

467 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2013/01/07(月) 19:44:51.20 ID:1KGRDduZ0
友人たちの話。 

彼らバイク乗りの間で、気味悪がられている峠があるのだという。 
「そこの峠を攻めていると、ヘルメットが後ろから小突かれるんだ。 
 何か固い物で、コツコツって。 
 感触としては、人の拳骨みたいな物で、軽くコツッと突かれるような」 
「いや、誰も後ろには乗ってないんだけどね。 
 真後ろを走ってるライダーからも、何も異常は確認されていないし」 
「俺たち、そこのこと、コツコツ峠って呼んでいるんだ」 
「でもコツられる奴って、大体面子が同じなんだよなー。 
 何か決まりでもあるのかなー?」 

話を聞かされた私は、つい軽い気持ちで言ってしまった。 
「コツコツされる人って、イケメンに限られるんじゃないの?」 

正直なところ、コツコツ体験者は特に美男でも醜男でもないと思うが。 
相当に適当な思いで口にした私の言葉に、ライダー達の雰囲気が変わった。 
変わってしまった。 

彼らは今も、気味が悪いのを無視してコツコツ峠を攻めている。 
その日コツられた者が、『その日で一番イケてるライダー』ということで、 
帰りにファミレスで皆に一杯奢るという決まりになったのだそうだ。 

「えっ、奢るの? 奢られるんじゃなくて?」 
聞き間違えたかと思い、そう問い直すと、 
「イケメンライダーは心も財布も広いんだぜ」と得意げに答えられた。 
……まぁ、仲が良くて何よりである。 
 

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