落ちた場所

627 本当にあった怖い名無し sage 2013/01/13(日) 17:32:28.16 ID:SiZg01Ab0
山にまつわる不思議な話 

近所の里山の話 
空は高かった 雲は白かった 
日差しは暑く 木陰は涼しく わたしは幼かった 

祖父の目をぬすんで遊歩道へひとりで散歩に行き 
やがて東屋にたどり着いた 
そこは泥靴のあとでよごれ ふきげんになったわたしは 
歩道をはずれ 木立のなかへ入っていった 
セミの声はうるさいくらいだったが  
見知らぬところを探検することにワクワクしていた 

あっと思った時には足をすべらし  
けっこうな急斜面を 滑り 転がり  
むきだしの手足を打ち付け 引っかきながら 落ちていった 

意外とゆっくりと止まったとき 手足はかなり痛かったが 特に大きなけがもなく 
わたしは泣きながら祖父のいる家へ歩いて行った 

大人になった今見上げてもよくぞ無事でと青ざめる斜面 
落ちた先は道祖神のよこのわずかな空き地だった 

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