山の浦島太郎
732 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2013/01/20(日) 21:53:07.68 ID:FlMsuPpT0
友人の話。
彼の一族は山深い集落に居を構えている。
近い親戚に、友人と同い年の子供Aが居た。
てっきり従兄弟だと思っていたのだが、ある時父親から聞いた話では、
これがどうも違うらしい。
Aの父親Bは、友人の祖父の弟であったという。
それが昔、山で遊んでいて神隠しにあったらしい。
どれだけ探しても見つからず、生存は諦められていた。
やがて祖父は結婚し、友人の父親であるCが生まれる。
Cが小学校に上がる頃になってから、ひょっこりとBが家に帰ってきた。
失踪した時の子供のままで。Cと同じくらいの姿格好をして。
Bに事情を聞いたのだが、
「山で遊んで帰ってくると、屋敷と家族が急に年を取っていた。
朝に自分よりちょっとだけ年上だった兄が、夕方帰ると大人になっていて、
おまけに自分と同年代のCが兄に生まれていた」
ということで、B自身も何が何だかわからないと散々泣いたそうだ。
結局BはCと一緒に育てられ、やがて同じ集落の女性と結婚した。
その子供がAなのだという。
「だから戸籍上では、Aは俺の従兄弟じゃなく、叔父だったんだと。
まぁだからといって、二人の仲が変わる訳じゃないんだけど」
この話を聞かされたせいかどうかは知らないが、彼もAも、結婚して
子供を育てる頃になると、山を下りて町で暮らすことにしたという。
「自分の子が神隠しに遭うのはイヤだからなぁ」
二人してそんなことを言いながら。