分け前


915 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage New! 2013/01/30(水) 19:50:17.82 ID:si9PjxMw0
友人の話。 

一人で渓流釣りに出掛けた時のこと。 
その日はどこに投げても入れ食いで、これまでに経験がないほどの釣果だった。 
夕刻になり、鼻歌を歌いながら帰り支度を始めたところ、妙なことに気が付いた。 

釣り上げた渓流魚のきっぱり半数が、その目玉を片方抉られていたのだ。 
おかしい、身が欠けた個体など一匹もいなかった筈なのに。 
気味が悪いので、片目が欠けた魚は放流して帰ったのだという。 

後で地元の漁協関係者にこのことを話すと、こんなことを言われた。 
「あぁ、それは山神様が手伝ってくれたから豊漁だったんだよ。 
 片目が取られた分は、山神様が『これは儂の分!』って主張していたんだ。 
 ちゃんと残して帰った? そりゃ良かったねぇ、罰は当たらないさ」 
思わず「……罰……罰って……」と呟いてしまったそうだ。 

「神様……御力添えくれるなら、その旨ちゃんと仰ってくれないと……」 
気弱だが信心深い彼は、そう言って仕切に恐縮していた。 

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