突き落とす夢


763 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/06/23 00:41
高校一年の夏休み、奇妙な夢を見た。 
Tという中学の時の同級生を、ビルの屋上から突き落とす夢だ。 
同じクラスだったこともないTだったが、どうしようもない 
不良ということで、顔と名前は知っていた。 
日を空けずに、再びTを階段の踊り場から突き落とす夢を見た時、 
何かあるような気がしてならなかった。 
でも、Tとは口をきいたこともなければ、共通の友人もいない。 
まあ変な夢ということで、何があったか確かめるまでには至らなかった。 
ただ記憶のうちにはあって、夜なんとなく思い出したりして、ふと、 
家から少し離れたコンビニまでふらふらと歩いていった。 
はっきりした目的があるわけじゃなかったが、今思うとそれが胸騒ぎ 
だったのかもしれない。 

コンビニに行くと、二年の時に同じクラスだったSがいた。 
雑誌コーナーで立ち読みをしているのを見かけると、Sもこちらに 
気づき、声をかけてきた。 
「おっ、久しぶり」 
中学の時もそれほど親しくはなかったが、お互いなぜか気安く話をした。 
同級生の近況を話し合ううち、SはTのことを口にした。 
つい最近、ノーヘルでバイク事故を起こしたそうだ。 
意識不明の重態らしい。 
内心ぞっとした。 
さすがにTの夢を見たことは言わなかったが、縁のない自分に、 
虫の知らせみたいなものが届いたような気がした。 

なぜだろう? 
布団に入っても寝付かれず、明け方うとうとした時のことだ。 
夢だったような気もする。 

枕元にFが立っていた。 
金縛りにあって身動きできない自分をFは見下ろしていた。 
そして、ニヤッと笑ってVサインをしてみせた。 
うわあーという自分の声で目が覚めると、汗をびっしょり 
かいていた。 
Fとは小学生の頃、仲が良かった。 
中学ではクラスが別々で、親しい付き合いはなくなったが、時々 
しゃべることはあった。 
卒業を待たずにFは転校していったので、すっかり忘れていた。 

後で知ったのだが、中学の時、Tが中心になってFへの 
いじめがあったそうだ。 
そして、Fが枕元に立った日、Tは意識不明のまま亡くなった。 

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