提灯


112 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2012/12/29(土) 01:19:53.80 ID:eq9mOgIr0
先輩の話。 

陽が落ちて暗くなった峠道を下っていると、前方の闇の中に明かりが浮かび上がった。 
誰かが提灯みたいな物を手にして、先輩の名前を頻りに呼んでいる。 

「こんな場所で誰だろう、知り合いかな?」 
誰何の声を掛けながら用心して近寄ってみると、不意に足を踏み外しそうになった。 
いつの間にか深い崖に向かって落ちそうになっていたのだ。 

落ちずに済んで思わず安堵の息を吐きながら、顔を上げてみた。 
もう何処にもあの明かりは見えなかった。 
不気味なのは、提灯の点っていたと思われる地点が、崖上の空中だったことだ。 
「質が悪い」と悪態をつきながら本来の道に戻り、そのまま下山したという。 

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