霊媒師

731 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/06/22 02:39
だけどさ、霊媒師っているんだよ!マジで! 

オレの母の実家は農家やってんだけど、 
夏の暑い日、叔母さんがいつものように畑耕してた時の話し。 
一人のおっさんが「水を飲ませて欲しい」とやって来たそうだ。 

とりあえず玄関先で水を渡すと、そのおっさん水を飲み干すや否や 
「この玄関、全然使ってないでしょ?」と言う。 

母の実家は農家ということもあってか多少変則的で、 
立派な正面玄関と、裏口と、そしてもう一つ、別の勝手口がある。 
家の門をくぐると真っ先にその正面玄関が見えるため、 
郵便屋や初めての客などはその立派な正面玄関を使うわけだが、 
何故だか身内は皆その正面玄関を使わない。 
昔に居間の壁を抜いて作った、別の勝手口を使うのだ。 

その勝手口も正面玄関も、場所的には大して変わらないし 
むしろ正面玄関の方が便利。『正面』なんだから当たり前かもしれないが、ドアの大きさも違うし。 
でも、確かにみんな正面玄関を使わない。オレもそうだった。 
正面玄関は庭(畑でなく)に近いため、庭いじりをする際に使うくらい。 

もちろん、掃除してないとかそういうことではない。 
住んでる人間さえ気づかなかったようなことを初めて来たおっさんにいきなり言い当てられ、 
叔母さんはなんとも不思議な気持ちになったと言う。 
このときだって、叔母さんいつものように勝手口から水を渡そうと思ったのを 
おっさんが率先して正面玄関の方へ歩いて行ったらしい。 

おっさん、だからどうしたとかは言わず、 
懐から一枚のお札を出し、叔母さんに渡したそうだ。 
「これを玄関のどこかに貼っとくといい」と言い残して、帰ってしまったと。 

それからというもの、みんな正面玄関も使うようになったのでした…となれば話として成立するんだけど、 
そういうことはなく今でも誰も使わない。 

話は飛ぶが、オレが大学通うため一人暮らし始めた頃、頻繁に金縛りにあい困っていた。 
霊がどうとかそういう問題ではなく、とにかく夜になると体が動かなくなって寝つけない。変な音や声まで聞こえる始末だ。 
夜が来るのが憂鬱で、つい夜更かしして、生活リズムメチャクチャ。大学どころではない。 

友達とさんざん飲んで、朝方、アパートの玄関開けようとしたところ、いきなり後ろから声をかけられた。 
振り向くとおっさんが立っている。 
オレがどう反応していいか決めあぐねていると、そのおっさん、 
いきなりオレにお札を差し出し、「これを部屋に貼っとけ」と。 

何がなんだかわからないでいると、さらに「これ飲みな」と、 
ミネラルウォーターのペットボトルを口に突っ込まれ、少量の水がノドの奥に入っていった。 
不思議なもんだけど、飲んだ途端不健康を引きずった体が綺麗になっていくのを感じ、気持ち良かったんだな。 

だが、はっきり言ってわけがわからなすぎる。 
あっけに取られているうちにそのおっさんはさっさと行ってしまった。 
今でも不思議に思うのは、抵抗感だけは全く無かったんだよな。明らかにおかしいのに。 
お札を貼ってみたところ、ウソみたいに金縛りも変な声も消えた。もう驚いて驚いて。 

で、母との電話のときにこの話しをしたんだけど、すると母が「その人どんな人だった?」と聞いてきた。 
特徴を話すと母はびっくりして、「だって、その人母さんのところに来た人と全く同じ」と言う。 
そうして聞かされたのが、最初に話した母の実家での出来事だった。 

霊媒師とは違うような気もするが、少なくともオレにとっては感謝すべき人だ。 
ちなみに、おっさんの風体について一切語っていないのは 
なんかそれを書いてはいけない気が物凄くするから。気のせいかもしれんが勘弁していただきたい。 

あと、オレのもらったお札はオレがそのアパート引き払う日に消えた。 
朝起きたら無くなっていたのだ。これもまたびっくりした。 
これでこの話しはおしまい。 

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