サニャツキ

274 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage New! 2013/08/09(金) 19:53:30.14 ID:L3hbmMFa0
山仲間の話。 

山歩きの途中で休憩していると、唐突に花の香りに包まれた。 
様々な野花の匂いが混じっているようで、何の花かは特定出来ない。 
見回してみたが、辺りには花など一輪も咲いていなかった。 

後で山に詳しい者に聞いたところ、「サニャツキに出会したのだろう」と言われた。 
サニャツキとは『山野憑き』が訛った語らしく、取り憑いた者の周囲に野花の香りを 
漂わせる物の怪なのだという。 
「花の香りを振りまくだけで、他に害はないというから、何も心配しなくていいよ。 
 ただこいつ、気に入った人間に憑くというから、しばらく付きまとわれるかも」 

確かに下山後、街中の自宅にいる時にも、いきなり花の香りが部屋に充満することが 
あったという。 
「一月くらいでなくなったけど、爽やかだし悪いものじゃなかった。 
 ただトイレの中で香りが爆発した時は、我慢できずに笑ってしまったよ。 
 凄く豪華な芳香剤だったなぁ」 
そう言って彼は苦笑した。

前の話へ

次の話へ