脇見運転

33 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/09/12(金) 09:08:51.61 ID:bRjxE5P10.net
友達と2人で、事業家仲間の別荘に遊びに行った。 
山中湖を見下ろす、山の高台ということだった。 
最初は俺が運転し、山中湖が近くなってからは、1度行って道を知っている友達が代わった。 
湖を左に見ながら山のほうに切れ込む道をさがしたんだが、迷子になっていつまでたっても着かない。
夏のことで、日が傾いても山中湖は賑わっている。 
おれは疲れて、そんな湖を見るともなく見ていた。 
何度か通った同じT字路にまた差しかかったとき、運転中の友達が左の湖のほうを振り向き、じっと 
凝視するという、とんでもないわき見運転をやらかした。 
折りしも対向車が来ている。 
道は狭い。 
「あぶねぇ、バカッ」おれはとっさにハンドルを脇からつかんだ。 
おれたちの車は潅木をなぎ倒しながら左に拠れ、対向車はその右をまっしぐらに通過していった。 
ものすごいクラクションで叱られたが、まあ、無事だったので安堵感しか残らなかった。 

「なにやってんだよ、あやうく他人様に迷惑かけるとこだったぜ!」おれはプリプリしながら 
言ったが、友達の反応は鈍く、おれは運転を代わってやった。 
すると、道はあんがいすぐに見つかった。 
仲間の別荘で男3人飲んだり食ったりし、大して役に立たない情報も交換したりして楽しく過ごした。
翌朝、おれは運転を買って出た。 
きのうのT字路に差し掛かると友達はまた、湖をじっと見ていた。 
「見ちゃったんだよね。きのう。きょうはいない」 
「うん~?」おれはしらばっくれて気のない返事をしたが、内心では「やっぱり」と思った。 
実はおれも見ていたんだ。 
にぎやかな人の群れの後ろのほうで、中年女と若い娘の2人連れ。 
2人とも黒ずくめの服装で、ま、おれも黒ずくめだったから人のことは言えないが、モノトーンのような 
青い顔、紗でもかかっているような存在感の薄さ。 
明るくさざめいている人々の後ろに影のように、ただ突っ立ってるだけの2人。 
『いかなる執着のありしにや』という、遠野物語の一説か浮かぶような光景だった。 
あとで別荘の友達に電話してきいてみたが、 
「山中湖は出るって言うね。でも、2人連れかどうかは知らない」ということだった。 

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