黒い腕
140 名前:陸自(現職) ◆d5En5fvPAM :03/05/28 21:17
今から十数年ほど前の話。
自衛隊は今でこそ少人数の部屋になり、各人ごとのプライバシーが
守られているが、ちょい昔までダブルベッドを6台詰め込んだ部屋でした。
部屋の先輩達が次々に昇任・退職していく中、部屋長の特権でもあった
シングルベッドに寝られるようになり、結構、嬉しかったのを憶えています。
そんなある日、季節は6月頃だったと記憶してるんだけど、夜、何かの物音で
目が覚めました。消灯後とはいえ、外の自販機の灯りで部屋の中は結構な明るさ。
何気に部屋の様子を見てみると、隣のベッドに制服を着た幹部が、こちらを
向いてうつむき加減で座っていました。
(何? 宴会の帰りか何か? にしても、こんな夜中に迷惑な・・・)
と思い、相手にしてたらタマランとの思いから、反対側に寝返りを打ち
寝直そうと思った矢先、壁の中から奇妙な声が聞こえてきました。
「ブツブツ・・ヒソヒソ・・」男女入り混じったその声は、聞く者に
非常に強い不快感を感じさせる、愚痴や恨み・つらみ、不平不満を口々に
言い合う様は、まるで亡者の声といった感じでした。
(いけない・・このままここに居たら危ない・・・)
そう感じた私は、急いでベッドから逃げ出そうとしました。
その時、信じられない事がおきました。
丁度、仰向けになった私の両脇から、黒い腕が2本、にゅう~っと伸びてきたのです。
その黒い腕は、暴れる私を羽交い絞めにして離しません。
気が付くとさっきまで居たはずだった、幹部自衛官の姿もありません。
(ああ、このままでは殺されてしまう・・)
そう思って観念した途端、フッと、腕が消えて身体が自由になりました。
起き上がったその足で、熟睡している後輩を起こし、「今、何時?」と訊ねました。
後輩:「ええ?なんですか・・・え~と、1時5分ですよ。」
陸自:「今ね、幽霊に襲われた。」
後輩:「はぁ?」
陸自:「まぁ、とりあえずトイレ言ってくる。帰ったら聞かせてやる。」
と、おっかなびっくりで用便を済ませ、部屋に戻り後輩に声を掛けました。
部屋に入り、ドアを閉めて「いや~参ったよ・・・」と言いかけた瞬間、
まるで何かがついて来たかのように、ガチャ・・ス~~~ッと、ドアが開きました。
後輩:「ちょっ、ちょっと・・・」
陸自:「おいおい・・・まだ居るよ・・・」
後輩:「頼んますよ!怖いっ!」
さすがにただならぬものを感じた私は、茶器戸棚にあった食卓塩を床が滅茶苦茶に
なるのも気にせずに、そこいらじゅうに振りまいたのは言うまでもありません。
長文ごめんなさい。