デザイン事務所社長の悲劇

103 名前:(1) :03/05/26 10:175
これは私の、さる同業者の悲劇である。 

都内で小さな編集デザインの事務所を開業しているKという男に、 
写真集の企画が持ち込まれた。 
企画自体が無謀なもので、さる国民的に有名な女子スポーツ選手の 
セクシー写真集という代物であった。 
彼は悩んだ。いくらなんでも正気の企画とは思えない。だがしかし 
昨今の不況の中、事務所の経営を考えれば引き受ける以外の選択肢は 
なかった。 
彼は律儀な職人気質だった。引き受けた以上はなんとしてもこの 
被写体を「美しく」見えるようにしなければならない。 
ポジフィルムのスキャニングに、画像データのフォトショップでの 
補正に、持てる技術の全てを注ぎ込んだ。 
だが仕事をしている最中にも色々な想念が湧いては消える。 
世の中の“美”という概念を冒涜しているのではないか。 
「嘘つき」 
「詐欺師」 
「お前なんかペソタくんとじゃれてろ」 
様々な言葉が彼の脳裏を過ぎ去り、彼の精神を苛んだ。 

徹夜作業の夜が明け、社員がぼつぼつと出勤してきて、女子事務員が 
Mac部屋をのぞき、彼に声をかけた。 
「社長ー?おはようございますー」 
「…………」 
「お疲れさまでした。で、データの入稿はいつ頃と連絡しましょう? 
…ちょっと…社長…社長!やめてください!社長ーっ!!」 
「うごああぁぁぁ!!」 
突如彼は女子事務員に襲いかかり、獣のようにレイプしようとした。 
他の社員に取り押さえられ、警察が呼ばれ、…そして彼は閉じこめられる 
ことになった。留置場ではなく、精神病院へ。 

病状については、又聞きでしか私は知らない。 
なんでも女性をみると全てが女神のように美しく見えてしまい、性衝動を 
抑えられなくなってしまうのだとか… 

彼の美観を破壊した仕事は、別のプロダクションへ受け渡されて出版されて 
しまったという… 

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