霧の中から

902 88kantai改め88 03/05/03 13:51
 
 私自身の、山での怖い体験ならば、>>885以外にも幾つかあるのですが、一つだけ、怖い、というより不思議な体験があります。 
今回はそれを書き込ませて頂きます。
オチがない話なので、つまらないかも知れませんが・・・。

これは、先述した山の、別の沢に入った時の話です。 
例によって「1人山中宿泊」をしていたのですが、その出来事は次の日の早朝(時間としては午前6時ぐらい)に起きました。 
 目覚めた時、自分は霧に包まれていました。
困った事になった、と思いつつも、時間的に特に急いでいるわけでもなかったので、霧が晴れるまで待つことにしました。 
周囲は全くの無音状態でした。
普通なら、鳥の声や風の音の一つも聞こえてきても良い筈なのですが、それらが全く無い状態なのです。 
視界も無い、音も無い、聞こえるのは自分の呼吸音と、腕時計が秒針を刻む音だけです。それぐらい静かでした。 
霧はしょうがないとしても、この静けさはおかしい。
気味悪ささえ感じました。でも、下手に動くわけにもいかないし・・・そう、考えていた時です。 

 霧の中を、何かが歩いてくるのが見えました。
いや、感じた、という表現が妥当かと思います。
何せ、視界はほとんど利きませんでしたから。 
とにかく、得体の知れないものがこちらへ向かってくるというのだけは不思議とわかりました。 
真っ先に頭に浮かんだのは熊です。
思わず、腰のナイフに手を添えていました。 
こんな霧の中、逃げても下手をしたら自爆して、自分が伝説化してしまうかも知れない。
まず、相手の正体を確かめてやろう。そう、思いました。 
相手はこっちに気付いてるのか気付いてないのか、真っ直ぐに向かってきます。そして、それは私も目視できる所まで、やってきました。 

思わず息を飲みました。
こちらへ向かってきた得体の知れないものの正体。
それは、女性でした。しかし、普通の(現代の)女性とは全然違います。 
まず、髪が妙に長い黒髪でした。変な例えですが、銀河鉄道999のメーテルより長い。 
そして、着衣ですが、登山用のそれではなく、着物でした。とはいっても、豪華なものではありません。 
ああいうのを、なんと呼ぶかは分からないのですが、浴衣とも違うし、十二単でもない。
ただ、真白な着物だったのは確かです。

私はとにかく、彼女を黙って見ているしかありませんでした。 
その時、彼女はこちらをチラッと見たのです。
こちらの存在に気付いたようです。いや、今までずっと無視してただけかも知れませんが。 
そして、呆けた顔をしている私を見ると、ほんの僅かですが、笑ったようでした。なんと言うか、とても優しそうな微笑だったのを憶えています。 
しかし、それもほんの一瞬で、その女性は、あっという間に霧の中へ消えてしまいました。

私はなにが起きたのか理解できず、しばらくは呆然としていたのですが、気付くと、あれだけあった霧が、殆ど晴れていました。 
その時までは、2泊もしていこうと計画していた私なのですが、その日の内に下山しました。 
 あの女性が何か私に危害を加えるとか、そういう気持ちで下山したのではありません。
ただ、今は山から下りた方がいい、何故か、そう考えていました。 
 今でもたまにその沢へは行きますが、あれ以来、彼女と会うことは一度もありません。思うに、あれは山(沢?)の神様だったんでしょうか? 
 以上が、私の不思議な体験です。オチ無しで駄文、申し訳ございませんでした。 

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