先客

249 こぴ 03/02/12 00:32
● “湯ノ岱温泉”での話。(北海道) 

かなり山に入ったところにある温泉地で、宿も寂れたひなびた古い宿が2件しか無いという温泉場。 
それでもその日の宿泊客はそこそこいたのだが、まだ10時過ぎという時間にも関わらず、温泉へ行こうと階段を降りると、宿の人も客も一人もおらず階下はやけに暗くなっている。
多少ひるんだものの、やはり温泉好き。入らないわけにはいかず、いそいそと浴場まで行き電気をつけて一人で気持ちよく浸かっていた。
そこの浴場は男女の浴室が壁で仕切られているのだが壁の上半分がすりガラスに 
なっていて向こうに誰かが入っていたら影が見えて気配や音でわかようになっている。
Sさんが入った時は男湯に明かりがついてなかったので(ガラスで見える)Sさん一人しか入ってないのがわかっていた。
のんびり浸かってさて、そろそろ上がろうかなと思っていた時に、フイに隣の男湯のほうから「あ゛~っ…」という男の人の声とザブーンとお湯が流れる音が!そう、誰かが男湯に入ってたのです。
ガラガラと戸を開ける音もせず電気のついてない暗い男湯に誰かいたのです。
そしてすりガラスの向こうに肌色の人影も!不思議に思ったSさんはしばらくひそんで様子を伺いながら考えました。 
「宿の人かな~、それとも酔って電気つけるの面度くさくて女湯の明りたよりに入っているのだろうか…痴漢?それとも…」と考えると怖くなって静かにいそいそと上がり浴衣をまとうのもそこそこに浴室から出たのでした。
廊下は相変わらず人気無しで暗く、立ち去るときに男湯を見たら脱衣場にも明りがない!そのとき本当に怖くなったSさんは部屋へ一目散に上がり一人でいろいろ考えたそうです。 
どう考えても不自然で不思議なのです。
その夜Sさん、電気つけっ放し、テレビつけっ放しで寝たそうです。 
(なんと100円のかかるテレビだったのに!)Sさんが見たのはお化けだったのか生身の人間だったのか 
は不明です。一人で宿を利用するということはそんなことにも遭遇する覚悟が必要なのでしょうか・・・。 

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