双子の幽霊

438 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/03/24 01:05
世の中に幽霊を見た人は結構いるだろうが、知的障害者の幽霊を見た人間はそうはいないだろう。 
俺もその一人。 
小学生の頃、近所に双子の知的障害者が住んでいた。 
その双子は親でも見分けがつかないほどそっくりだったんだが、兄貴の額に巨大な切り傷があるので、 
それでどちらか判別することができた。 
過去に兄弟喧嘩した時、弟に包丁で切りつけられた時の傷らしい。 
俺やクラスの友達は、その双子ととても仲が良かった。 
彼らはドラゴンボールが大好きだった。 
「かめはめ波は本当に出来るんだぞ」と言うと、彼らは一生懸命かめはめ波の練習をしていた。 
本当に出そうな勢いで。 

その双子が、電車に轢かれて死んだ。 
轢かれたのは線路のかかっている橋の上で、線路沿いに歩いていて橋を渡っている時に運悪く 
電車が来てしまい、よけきれずに死んでしまったとのこと。 
あと少しで橋を渡りきれるという場所の事故で、正面から電車が来たのだが、猛ダッシュで橋を渡りきり、 
横にやりすごせば助かったのだが「向かってくる巨大なものから逃げる」という本能的な行動から 
彼らは橋を戻り始めてしまい、事故に遭ったのだ。 
なぜ彼らは線路の上をひたすら歩いていたのか友人の間でいろんな説が飛び交ったが、 
多分乗ろうと思っていた時間の電車に乗り遅れてしまったため、 
「じゃあ線路沿いに歩いていけば次の駅に着くんじゃないかな?」という理由で線路を歩いていた 
という説が有力だった。その事故は新聞の三面記事にもなった。 

数日後、死んだ双子の幽霊を見た、と言う奴が現れた。 
また数日後「俺も見た」「俺も」と、双子の幽霊の目撃談はどんどん増えていった。 
俺はそいつらが何かと見間違えたのだろうと思い、その話を信じていなかった。 
・・・・・・が、彼らは俺の前にも現れた。 
夜中、布団に入ったまま部屋を暗くしてテレビを見ていた時の事だ。 
だんだん眠くなってきて、俺は半分意識が遠のいてきて目をつぶっていた。 
その時気づいたのだが、部屋に人の気配がするのだ。両親は下の部屋。 
一体誰が・・・と思い目を明けると、そこにはあの双子がいた。 
その双子の幽霊は別に何をするでもなく、普通に部屋のソファに座ってついているテレビを 
見ていたのだ。ほんとただそんだけ。 
俺は恐くなって目をつぶりそのまま寝てしまい、朝になったらその双子はいなかった。 

今思うと、その双子はあの世に行く前に、俺達に最期の別れを言いに来たのかもしれない、と思う。 
なんか涙が出た。 
俺もあと数十年したらあの世に行くと思うので、あの世であいつらに会って今度はフュージョンを 
教えてやりたいと思う。もちろんその双子が死んでからのドラゴンボールのストーリーも教えてあげたい。 

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