入院


801 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/04(木) 02:04:18.17 ID:ZFX22UN50.net[1/5]
俺には過去一度だけ入院経験がある。 
その件で腑に落ちない点が発覚したので聞いてほしい。 

入院したのはもう13年も前。 
高校3年生の夏のことだ。 

いつものように早起きの親父に声をかけられ、寝室(和室)で目覚めた俺は、立ち上がるなり目の前が真っ暗になって床に倒れこんだ。 
体感的には立った状態から床に倒れた状態に飛んだ感じ。倒れた衝撃やなんかは記憶に残っていない。 

俺は高熱を出していた。 
すぐさま親父の軽トラで、昔馴染みの田舎病院に運ばれた。 

診断の結果、4日間の入院と聞いて驚いた。 
何よりも皆勤賞がなくなってしまう…とショックを受けたのを覚えている。 

当時人見知りが激しく友人のいない俺は、勉強で周囲を見返すことだけが拠り所だった。 
性格が悪いし、性根ではサボりたがりだから、今で言う真面目系クズというやつだ。 
その表面的真面目ステータスの筆頭である皆勤賞が潰えてしまう…。 
ガックリきてしまった。

入院が決まるとまずは入院の準備だ。 
子供の頃から通っている病院だが、入院となるとどことなく印象が違う。 

売店でスリッパを買った。 

母と姉に図書館で「まんが日本の歴史」を借りてきてもらった。(俺は日本史が不得意なので勉強の補助のつもりだった) 

窓からの風景から思い出すに、病室は三階ぐらい?の高さだったと思う。 
西向きの窓からは小さな島々と海が見えた。小高い斜面から見下ろす格好だ。 
T字通路の突き当たりの四人用部屋。 
ドアから入って左奥の窓際が俺のベッドだ。 
同室は中学生ぐらいの大人しそうな男の子が一人だけだった。

入院生活は人生初体験だらけだった。 
まず、慣れない点滴を引きずる生活は不便だった。 

「針が刺さってますからチューブに力かけないでくださいね」と看護師さんに注意された。びびりの俺は針が折れたらどうしようと、おっかなびっくりの生活を送った。 
最後針を外したときは針と一緒に血の塊?がビロビロッと出てきて驚いたもんだった。 

病人食も初めてだった。 
まずくはないが、味気のない食事。 
なんとなく漂う老人っぽい、病院っぽい臭いで、食欲はいまいちそそられなかった。 

慣れない食生活とストレスのせいか、汚い話だが見たこともないゴッツイ一本糞が出て、和式便器の水量ではまったく微動だにしなかった。 
恥ずかしながら同室の男の子の力を借り、ティッシュをうまいこと使って流し事なきを得た。 

これをきっかけに人見知りの俺も同室の男の子と打ち解けた。勉強を教えてあげたりゲームの話をしたりするようになった。 

そんなこんなでワアワア過ごした病院生活も4日で終わり、無事退院となった。 

同室の男の子は涙目で見送ってくれた。 
社会人になった今では、日本にいるならいつでも会えるてなもんだが、当時自転車しか自力での移動手段を知らない自分にとっては、今生の別れだと感じてとても悲しかった。 

皆勤賞が無くなったのは惜しかったが、入院もなかなか出来る経験ではあるまい。いい思い出にはなったかな。この10数年間そう思っていた。

先日、親父と電話で話した時のことだ。 

入院している叔母の話になった時、ふと思い出して自分の入院話を持ち出した。 
入院も長いとしんどいんだよなー。俺もあの時はさー… 

『あの時はなー…』という返しがくると思ったのだが、親父の反応が悪い。 

どうした?と聞いてみると、 
『お前こそどうした?』 
と逆に聞かれてしまった。 

いやだから俺の入院の話。 
『お前入院なんてしたことないだろ』 

え、いやだから俺の入院の話。 
『まじでどうした?』

よくよく親父と母と話してみると、 
俺に入院の経験は無い。 
姉に聞いても同じことを言う。 
皆勤賞もしっかりもらって実家にある。 

でもあの病院での日々は、生々しい経験として記憶にある。 

『そもそもうちの馴染みの病院から、海なんて見えんだろうが』 
そうなんだ。 
矛盾で頭が混乱している。

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