その瞬間の写真

96 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/02/19 02:24
私が小学校を卒業して二年後のこと。 
ある日、小学生時代の友人、義也から電話がかかってきました。 
義也の声は元気がなく、暗く沈んでいました。 
聞くと「妹が死んだので葬式に来てくれ」とのことでした。 
葬儀の後、義也は、私にことの経緯(いきさつ)を話しはじめました。 

義也の妹は、身体が弱く運動が苦手でした。ですが、以前から「運動会にだけは出 
たい」と言っていたそうです。 
もちろん主治医には運動会の参加を止められていました。 
それでも義也の妹は、どうしても運動会に出たいと主治医に泣きつき、情にほださ 
れた主治医は「無理をしない」という条件で運動会の参加を許可したそうです。 
そして運動会当日、その日は体調が良く、徒競走では一位をとり、とても喜んでい 
たとのことでした。 
しかし、1週間後、義也の妹は亡くなってしまいました。 

そこまで話すと義也は、一枚の写真をとりだして私に見せました。 
義也の妹が一位でゴールしたときの写真でした。 
「その写真、気持ち悪すぎるだろ」 
と、義也に言われ私は気づきました。 
背景に映っていた父兄や児童たちの拍手が全て手を合わせていたのです。しかも目をつむって。 
まるで、お経を唱えるかのように…… 

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