破天荒


669 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/03/20(日) 01:58:29.85 ID:K+PbF3lvO.net[1/8]
もう10年以上前、高校生の頃のこと。友達と数人で花見をした。隣の市のそこそこ高い山に登った。
猪とき猿とか頻繁に出る山で危険だったけど、そういうのも楽しいお年頃だった。田舎は娯楽少ないしね。 
で、ビニ弁とか菓子とか食い散らかしてひとしきり騒いだあと、夕方になって下りるかとなったとき、俺糞したくなってさ、一人離れて藪の中に入って行ったんだ。 
で踏ん張ってたら、茂みの向こうに石造りの何かがチラチラ見えたの。
し終わって雑草で拭いてからそっち確認しに行くと、小さな祠があって中にリカちゃん人形が立ってた。 
他に腐ったみかんと空のコップ。酒缶のやつね。何これおもれーと思って写メ取って皆のところへ戻った。 
んで写メ見せたんだけど、そこには祠から片足を踏み出してこっち来ようとするリカちゃんが写ってた。

俺絶叫。マジ絶叫。皆はネットから拾った画像だろとか言ってたが、俺が帰ろう帰ろうとビビりまくっているのを見て何人かが藪の中へ入って行った。 
俺はもちろんそこに留まった。しばらくして戻ってきたが一人の手にはリカちゃん人形が……ニヤニヤしながら見せびらかしてくる。 
「お前アホか!はよ返せ!」 
「イヤだよ。返したいならお前がやれ」 
といきなり放ってきた。思わず避けたら足元に落ちたリカちゃん人形と目が合った。よく見たら目蓋がついててぐりーんぐりーんと上げ下げしている。 
「いいから早く戻してよっ!」 
俺は叫んで投げてきた奴を睨みつけた。場が白けて他の奴も戻した方がいいと言ったからそいつは舌打ちしながら戻しに行った。 
その翌々日、そいつが死んだ。風呂場で倒れてそのまま。心筋梗塞だった。

俺以外のメンバーもビビりまくった。明らかに祟りとしか思えなかった。放課後図書室に集まって相談した。 
霊媒師のところへ行こうと言う奴がいたが知り合いにそんなのいないし、寺や神社は身近な存在過ぎて坊さんや神主さんは普通のおっさんという認識しかなかった。 
皆が黙ってしまったとき、本棚の通路から出て来た奴がいた。同級生のHだった。いつも文庫本読んでる暗い奴。オタッキー顔。あまり話したこともない。 
「それ解決したら友達になってくれる?」 
何を言い出すかと思ったら。てか、盗み聞きかよ。俺たちは相手にせず、図書室を出た。
次々別れ一人で家へ向かっているとき後ろから走ってくる足音が。振り替えれば奴がいた。

「ねえ、困ってるんでしょ?ちょっと頼んでみてよ」 
俺は若干キレつつ聞いた。 
「お前何か霊能力とかあんの?」 
「全然ない。見たことないし信じてない」 
「じゃあどうやって解決するんだよ!」 
「とにかくやってみるから」 
「お前いい加減にしろよ」 
「いいから案内して」 
「イヤだよ。もう二度と行きたくねえんだから」 
振り切って帰った。 
次の日、もう一人が死んだ。校門の前で暴走車に突っ込まれて。他にも生徒はいたのにそいつだけピンポイントで死んだ。


それ以降調子づいたHはしつこく付きまとってきた。俺は時には暴力をふるいつつ拒否していた。何故か他のメンバーには行かない。舐められているようだった。 
だが交通事故の翌週、また一人死んだ。学校の屋上から転落死。自殺扱いされた。俺はHに降参した。
あそこへ案内することにも同意した。イヤでたまらなかったがこのままじゃ死ぬ。背に腹は代えられなかった。

他のメンバー――残り2人――は同行拒否したからHとマンツーマンin山。念のために痴漢撃退スプレーを持って行った。 
猪や猿と出くわすことなく例の藪の近くまできた。怖くて先に進みたくなかったが一人で待つのも怖いから仕方なく祠までついていった。 
祠は初めて見た時と同じだった。リカちゃんの立ち位置は変わっていたがそれは最初に死んだあいつが動かしたせいだろう。 
「これ?」 
「何か感じるか?」 
「だから見えないって」 
「じゃどうするんだよ!」 
イラついて声を荒げた。 
「こうする」 
Hはリカちゃんを足で祠の外に落とした。さらに蹴っ飛ばした。 
「おい!」 
俺はめちゃくちゃビビった。まさかいきなりそんなことするとは思わなかった。 
Hは止まらずリカちゃんを踏んづけている。顔から足からガンガン踏みまくっている。 
「おい止めろって!」 
Hに駆け寄り突き飛ばした。尻餅をついたHはこっちを睨みつけてきた。目が血走っている。 
「邪魔しないで!」 
立ち上がって続けようとするので羽交い締めにした。こいつどうしたんだ。発狂したんか? 
「ヤバいって。お前どうしたんだ」 
「何も見えないから見るためにやってんだよ!」 
「?!」 
「粗末にしたら祟るだろ?たぶん。そしたら現れるだろ何か。見えるようになるじゃん」 
あまりの超理論に俺は思わず手を離してしまった。Hはリカちゃんに駆け寄り近くに落ちてた石を掴んでガンガン殴り始めた。リカちゃんの顔がひしゃげて服が破れた。

そのままどのくらいの時間が過ぎたのか。俺は呆然とHによる人形蹂躙を見ていた。山の中でオタクがリカちゃん人形をめちゃくちゃにしている。あまりに異常な光景だった。 
俺はその内吐き気がしてきてHから背を向けて吐いた。その後もしゃがみ込んでじっとしていた。 
Hの激しい息づかいと「この野郎」「あばずれ」とか低い声で聞こえてくる。 このまま逃げるか。立ち上がれるか。体を浮かしかけたとき背中に手の感触が。 
「ヒッ」 
「終わったよ」 
見るとそこにはリカちゃん人形のバラバラ死体が。 
「結局何も現れなかった」 
Hは残念そうに行ってポケットからライターを出した。 
「おいお前何を」 
「完全犯罪」 
Hは枝や葉っぱを振りかけてリカちゃん人形に火をつけた。嘘みたいに燃えた。燃えカスはHが茂みの下に蹴り込んだ。 
その頃には俺もどこか感覚が麻痺してしまっていた。 
「おいもういいだろ。帰るぞ」 
「出直しだね」 
二人で藪から出ようとしたとき、Hがあっと声を出して引き返した。 
「何だよ!」 
「肝心なやつが残っていた」 
ニヤリと笑うと祠まで戻り、両手で押し倒した。そして何と立ち小便し出した。 
「お前ガチのキチガイだな」 
「友達がかかってるんだよ?もう引き返せないよ」 
小便しながらそう呟くHは例えようもなく不気味だった。

そして今度こそやっと下山した。 
次の日Hは学校を休んだ。 
翌々日普通に来た。昨日は県庁所在地のアニメイトにフィギュア買いに行ったらしい。 
「リカちゃんの天敵を買ってきた。これから山へ置いてくる」 
放課後そう言って帰って行った。それ以降俺たちは誰も死ななかったからきっと功を奏したのだろう。 
Hとはそれ以降友達というか腐れ縁みたいになって時々連んで変な体験をする羽目になるのだが、それはまた別のお話。 

それより10年以上経って、あのときのメンバーから連絡があった。Hが死んだらしい。
山でバラバラになった焼死体で見つかったんだって。側には空になったライターが落ちていたそうだ。

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