妖しき友人-弐-

うみんちゅさん  2008/09/29 02:06「怖い話投稿:ホラーテラー」
初夏の放課後、僕は友人Aと話していた。

『つまり、要は想像力だよ。考えを膨らませる力。誰だって“心霊スポット”と言われてそこに行けば、空想回路のギアが回り始めるのさ。』とAは外の風景を眺めながら言う。
『じゃあ、心霊現象は全て人間の空想や思い込みからくる勘違いなのか?』と僕はAに投げかけるが、Aは気の無いような返答をする。
『その可能性が大きいと言いたいね。心霊現象が起こったと証言するのは“人”だろ?科学のように数式で証明されたものじゃない。だからこそ、人の行く先々で心霊現象は起こる。全てのことに理由はあるのさ。』
Aはあっさりと言ってのけた。

『確かにね。幽霊よりも恐いのは、実際は人間かもしれないな。』と僕は一般論を口にした。
『そうだな。現実に存在する人間の方が恐ろしく、時に恐怖の対象になり得る。』Aは僕の方に向き直って呟いた。

『なぁ、A。話ついでに思い出したんだけど、3丁目の公園によくいるあのオッサン、知ってるか?』
『…どのオッサン?』
『ほら、セーラー服着て、公園の中をうろついている人だよ!』
『あぁ…あの人ね…』
『そう!夕方とかに見ると何か恐いよな!女子とかはあの公園を避けて通るよ。』
『なるほど…事情が分からない人には怖いだろうね。』と、Aはまた外を見ながら言った。
『事情?何だよ?Aは知ってるのか?』僕は訝しむようにしてAに問うた。
Aは僕の目を見つめると、静かに語り始めた。

『あのおじさん…Yさんには娘さんがいたんだ。中学生になったばかりの、とても父親想いの子だった。』
『“いた”?じゃあ、今は…』
『亡くなったんだ。交通事故でね。』Aは目を細めて呟いた。『中学校の入学式の日に。Yさんはさぞかし無念だったことだろう。一人娘だったからね。』Aは息をついた。
そこまでAが話したときに、僕は気付いた。『あのセーラー服は!?』
『そう…娘さんが着ていた…ずっと着ていくはずだった服さ。Yさんとしては娘を想うあまりの行為だろう。全てのことに理由がある。』
僕は急に切なくなった…。
『そんな…事が…』
『そう思い込めば、見方が変わるだろ?』
Aは悪戯っぽく微笑む。
『!ちょっと待って!嘘なのか!』
『あぁ嘘だ。今作った。』
『じゃあ何でセーラー服来てるんだよ!?』
『知らないよ。ただの趣味じゃん?』
『そんな!』
『言っただろ?要は想像力でどうにでもなるのさ。』

Aは再び悪戯っぽく笑った。

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