予感

693 本当にあった怖い名無し sage 2005/06/14(火) 22:02:53 ID:T/l5C0JA0
彼女とデートの日、待ち合わせ場所へ向かう途中、携帯が鳴った。彼女からだった。
「今日は行けない」と言う。「もう会わない方がいい」と言う。
理由を訊いたが答えない。しつこく訊くと「会うと良くないことが起きる」と言う。「私は生きてちゃいけないの」と言う。
納得できなかった俺は「会おうよ」とごねた。 「死んじゃうかもしれないんだよ」と彼女が言った。
「死んでもいいから会ってよ」と俺は言った。 ここで引き下がって、納得できないまま生きるのは耐えられないと思ったから。
慌てた感じで彼女が「そんなこと言っちゃだめだよ!」と言った。「本当に死んじゃうんだよ!」って。
30分ほどやりとりの後、彼女が折れた。 来てくれることになった。

しばらくして、また携帯が鳴った。 「やっぱり行けない」と言う。
「今、どこにいるの?」 「東京駅」 「じゃあ、あとは乗りかえるだけじゃん」
「できないの」 「ハァ? 何で?」 「悪い人が中に入って邪魔するの」
理解できなかった。 俺に会いたくなくて、そんなことを言ってるのかな、とも思った。
「じゃあ、そこにいて。 俺がそっちに行くから」 「来ない方がいいよ」 「そこにいて。 すぐ行くから」
俺は改札を抜けて、登り電車に乗った。

東京駅に着いた俺は、彼女に電話をかけた。 「着いた。 今どこ?」と訊いた。
彼女は「○○って喫茶店の前」と駅構内の店名を言った。 「わかった。 すぐ行く」と答えて、俺は走った。
見なれた店の前に彼女がいた。 ほっとした。 なんか悲しそうに「何で来ちゃったの?」と言われた。
「会いたかったから」と答えた。 彼女が笑った。
その店に入りコーヒーを飲みながら話した。 彼女は妙に周囲を気にしていた。 しばらくして、彼女の携帯が鳴った。
中学の友達からだった。 数年ぶりの連絡だという。 三人で一緒にゴハンでも食べようということになった。
有楽町で待ち合わせ、食事をした。 その友達曰く「なんとなく久しぶりに会ってみたくなった」とのことだった。
食事を終え、三人でぶらぶらした。 彼女はときどき周囲を気にしていた。 さほど遅くならない内に、別れて帰途についた。
別れ際、彼女が俺の手を握って「気をつけてね」と言った。 「よくないことがあるかもしれないから」って。
俺は本気にしなかった。

六日後、彼女が死んだ。 事故だった。
もし、彼女が言っていたことが事実だったのなら、俺が殺したようなものかな。 俺が殺したのかな。 と思った。
確かに、よくないことが起きた。 俺自身が死ぬよりも、よくないことだった。

三年前の話だ。

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