気づかない

828 :822:03/02/12 05:00 
数年前の夏、高校生の時に体験した話です。

その日は、とても蒸し暑かったのを覚えています。
夏休みになったばかりで、特にする事のなかった俺は、クーラーをガンガンにかけて昼寝をしていました。
ただ、起きてからまだ数時間しか経っていなかった事もあってか、半分起きている様な感じだったと思います。
すると、突然体が全く動かなくなりました。
自分は霊体験をした事はなかったのですが、
その当時、金縛りの様な状態になる事が度々あったので、変な慣れがありました。
また、昼間だったという事もあり、さほど怖いとは思いませんでした。
しかし金縛りが解けないまましばらくして、俺は異変を感じました。

その時クーラーを付けていたので、布団をかけてたんですが、
その布団がズルッ…ズルッ…と、ゆっくりベットの下に落ちていくんです。
ちゃんと布団がかかっていなくて落ちるのなら、
最初はゆっくりでも、そのうち布団の重みで、一気にドサッっと落ちますよね!?
でもそうじゃないんです。本当にゆっくりゆっくりと落ちていくんです。
ベットの横で誰かが布団を持ち上げ、本当にゆっくりと引っ張っている!
そうとしか思えませんでした。ヤバイ!と思いました。
あまりの恐怖で目を開ける事も出来ない。しかも体も動かないまま。

ドサッっと布団の落ちる音がしました。
その時、ベットのすぐ横に人の気配を感じました。
目をつぶっていても人の気配ってなんとなくわかりますよね?
近くに誰かが立ってると感じました。その直後…
「うぅ~…うぅ~…」
マジでびびりました。耳元で男の低い声がしたんです。

絶対に目は開けないと自分に言い聞かせ、ただじっとしていました。
どれくらい時間が経ったか覚えていませんが、金縛りは解け、人の気配はなくなりました。
そーっと目を開け部屋を見渡しましたが、誰もいません。
ベットから起き上がると、布団はベットの下に落ちていました。
クーラーを付けていたのに、汗でびっしょりだったのを覚えています。
その場にいたたまれなくなり、速攻で着替えて、近所で飲食店をやってる両親の所へ行きました。

さっき起こった事を話したかったんですが、
どうせ信じてもらえないだろうなと思い、飯だけ食べて店を出ました。

その後、地元の友達の家へ行き、友人に話をしました。
友人はあまり信じていませんでしたが、
気を使ってくれたのか、0時近くまでカラオケやらボーリングと、色々付き合ってくれました。
俺もだいぶ気が晴れ、家に帰る頃には恐怖感はそこそこ薄れていました。

風呂に入り部屋に入ると、昼間の事がやはり気になりましたが、
気にしすぎてもなんなので寝ることにしました。

しかしなかなか寝つけず、ベットでごろごろしていました。
そうこうしている内にだんたん眠くなり、そろそろ寝れそうだなと思った時、 
昼間と同じ様に金縛りにかかりました。
ドンドンドンドンッ!ドンドンドンドンッ!ドンドンドンドンッ!
もの凄い音がしました。もう何がなんだかわかりませんでした。
ドンドンドンドンッ!ドンドンドンドンッ!ドンドンドンドンッ!
音は止まりません。どうやら自分の寝ている足側の壁から音がします。
ドンドンドンドンッ!ドンドンドンドンッ!ドンドンドンドンッ!
誰かが自分の部屋の壁を叩いている!そんな感じの音でした。
叫んで両親を呼ぼうと思いましたが、もちろん声はでません。
人の気配はしませんでしたが、この時の恐怖は一生忘れないと思います。

気が付くと朝でした。どうやら、知らない間に寝てしまっていました。
不思議と今さっき起きた事の様に、記憶がはっきりとしていました。

1階に降り、両親に「夜中、俺の部屋の壁叩いた?」って聞くと、
「そんな事するわけないでしょ。
 そんな事より、裏の家のおじいさんが亡くなったのよ。後で挨拶に行くから準備しときなさい」
体中に鳥肌が立ちました。
俺は両親に、昨日の昼間からの出来事を全部話しました。
親父が「不思議な事もあるもんだな」と言ったきり、黙ったままでした。
その様子がとても不自然だったので、「何かあるの?」と何度も聞きましたが、結局何も聞き出せませんでした。

しかし最近、友人と両親の4人で食事をしていた時、「そんな話あったなー」と、この話をしていると、
母がこんな話しをしてくれました。

今も住んでいますが、この家には中2の時に越してきました。
新築ではなく中古物件でした。自分達が越してくる前は、この家に4人の家族が住んでいたそうです。
その家族には仲のいい兄弟がいて、裏のおじいさんに良く遊んでもらっていたそうです。
裏のおじいさんには孫がいなかったそうで、自分の孫の様にかわいかったのでしょう。

でもその家族は引っ越す事になり、おじいさんも兄弟もとても辛かったみたいです。
その後、この家は1年ほど空き家だったそうで、
自分達が越してくる頃に、おじいさんは体を壊し入院していたそうなんです。
だから俺は、裏の家の人と話した事はありましたが、おじいさんに会った事はありませんでした。

母は、「最後にその子達に会いたかったんじゃないの」と言っていました。
自分もそう思いました。その時の恐怖は忘れられませんが、少し優しい気持ちになれました。

前の話へ

次の話へ